第36話 ファッションショー

服屋に入ったあと、義姉さんの服を選んでもらうはずだったのだが俺の事なんて気にせず「これもいいですね……」と独り言を呟きながら俺に着せてくるので着せ替え人形になってる感が否めなかった。まぁファッションセンスがない身からしたら向こうが似合うと思ってくれたやつを俺が選べばいいだけなので楽である。


さっきから店員や客から視線を集めているがそれは義姉さんの容姿のせいなのか俺の髪色のせいなのか……おそらく両方だろう。男性は義姉さんの方に視線を向けていて女性は俺の方に向けている。


「義姉さーん、さすがに着させすぎだって。俺もう最初らへんに着たやつがどんな見た目なのか覚えてないんだけど」


「今は私の好奇心で着せているだけで吹雪に似合っていた数着はもう決まってます。それを買うつもりですがもう少しだけ私の好奇心に付き合ってくれませんか?」


「ん、でも変なやつは着させないでね?」


昔の事なのだがケモ耳が付いてるパーカーを着させられて無茶苦茶に写真を取られたのを覚えてる。その時はまだ小学生だし別にいいのだが今となっては絶対に着たくない、義姉さん達だけならまぁいいが他人にバレたら俺は学校に行けなくなるかもしれない。


変なやつは着させられなかったが明日の遊びに着ていく服と昔着せられたやつと似ているケモ耳が付いたパジャマを義姉さんは買っていた。


買ってくれたからには使うのだが紅葉とか蒼井が泊まりに来る時はなるべく使わないようにしておこう、からかわれるから!


「義姉さんは高校生のパジャマ姿を可愛いと思うの? まぁ女子なら可愛いかもしれないけどさ」


「男の子がこういうのを着ると案外可愛いものですよ?」


俺には理解できないがもっとこういう服が似合う人がいると思う。まぁ俺の知り合いは全員似合うと思うが特に紅葉や奏音は似合いそうだ。


実際に紅葉や奏音が着ている姿を見てみたいので次泊まりに来た時に1回来てもらおうかな……。


「服買い終わったけどこの後はどうするの? 俺はなんでもいいんだけど義姉さんは他に何かしたい事ってある?」


「蒼井ちゃんに頼んで吹雪の友達を全員呼んでもらってるので今日買った服をお披露目しましょう! もちろんそのパジャマもですよ?」


まぁ男子がいないのでマシだろう。女子にからかわれるぐらいなら別に何も思わない、まぁずっとからかわれ続けるのなら対応を考えるとしよう。


既に義姉さんの家に全員集まってるらしいので俺たちは菊池さんが運転する車に乗り込んだ。


こんなにも早くパジャマ姿を見れるチャンスが来るとは思わなかった。紅葉たちが着るのを見るだけならいちばん良かったが俺もあのパジャマを着ないといけないし、絶対写真を撮られるんだよな。


一日ぶりに戻ってきた義姉さんの家は昨日より盛り上がっていた。というかほぼ女子会みたいなところになんで俺がいるんだろう。


「白神くん久しぶりー、今日はファッションショーをするんでしょぉ? 白神くんがどんな服を着るのか楽しみだなぁ。それとヘアピン似合ってるよぉ」


「はは、ありがと。このヘアピンは蒼井から貰ったんだよね、おかしくないのならよかった」


男のファッションショーなんて正直なんの価値もないと思うのだがシャッター音が結構鳴り響いていた。その中でも俺があのパジャマを着た時が1番鳴り響いてたと思う、なんで?


とりあえずこのパジャマを奏音に着てもらったのだが結構乗り気でポーズまで取ったりしてる。そして隣で義姉さんが歓喜の声を上げながら写真を撮っている。


「白神くんはこういうのが好きなのかなぁ? 僕もわかるよぉ、ケモ耳っ子はいいよねぇ」


「俺もケモ耳っ子は好きだよ。まぁ奏音には似合うと思ってた」


次は紅葉なんだが……身長差のせいでものすごいダボダボだ。まぁそれが逆にいい、義姉さんも歓喜の声を上げながら以下同文。


「吹雪のだから結構ダボダボだねー。歩いたら転けちゃいそうだからもう脱ぐー」


残りは蒼井なのだが蒼井は奏音と紅葉を不思議そうな顔で見つめている。


「な、なんで吹雪くんが1回来た服を平然と着れるの!?」


「えー? 別に肌着じゃないしほとんど新品なんだから大丈夫でしょ。まぁ吹雪の家に住んでた時に吹雪の服はよく来てたしねー」


「お店で試着する時も誰かが何回か着たやつを着てるんだよぉ? そう考えたら別にいいんじゃないかなぁ」


奏音の言ってることは正しいのかもしれない。普通に店で試着する服の方がもっと多くの人が着ているかもしれないしそもそもこの服だって何回かは試着された後のやつだろう。


「まぁ確かに……?」


奏音に説得された蒼井がそのパジャマを着てこの場にいた全員から「可愛い」と言われ顔を赤らめたところで解散となった。


そして義姉さんから3人のケモ耳パジャマ姿の写真が送られてきたのだが普通に俺が保存してることをバレたら蒼井だけには怒られる気がするんだが。(でも保存する)


「義姉さん、また明日」


「気をつけて帰るんですよ?」


気をつけて帰ると言われても菊池さんが送ってくれたので何事もなく家に帰れた。


「明日が楽しみだなぁ。ほんと、いつぶりに遊ぶんだろうな俺は」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る