第34話 何気ない日常
私がそろそろ寝ようと思って部屋に戻ったら使っていいよと言われてたベットに吹雪くんが眠っていた。いつから寝ていたかは分からないけど少し揺さぶっても起きなかった。
自分でソファーで寝ると言っていたのになんでベットに寝ているのかと思ったがそもそもここは吹雪くんの家なので吹雪くんがどこで寝ようが自由だ。
「さすがに枕とブランケットがないとソファーでは寝れない、それか一緒に寝るとか……」
一体何を考えているのだろう、普通に考えて男女の同級生が互いの家に泊まるまではいいとして一緒のベッドで寝るというのはないだろう。
「し、仕方ないから吹雪くんの部屋で寝ようかな……」
入らないでと言われていたけどこうなってしまったから不可抗力だ。そう自分を納得させて私は吹雪くんの部屋に入った。
「自分の部屋にベットないんだ……。というかここ机ひとつと本棚しかないじゃん」
もう何もなしでソファーで寝るしかないかと思って吹雪くんの部屋を出ようとした時に信じられないものを見た。
「なに……この本の山。しかもライトノベルじゃなくてちゃんとした勉強の……」
もしこの本を全て勉強していたとしたら……。
「吹雪くんは休んだ方がいいね」
※※※
朝起きて完全にやらかしたことに気づいた。ベットは蒼井が使っていいと言っていたのに疲れすぎて普通に忘れていた。
「おはよう吹雪くん、朝ごはんは私が作っておいたから。それと……疲れてるのに休まなかったらそのうち体壊すよ」
「俺が悪いから怒らないけど、蒼井は俺の部屋を見たんだよね?」
「うん」
あの部屋を見られたのなら隠す必要はもうないだろう。ただこれ以上心配させるわけにはいかないので俺はまた平然を装う。
「義姉さんには迷惑かけてばかりだから仕事で手伝おうと思ってね。でも数年間仕事はしてないから今から覚えようと思って勉強してる、まぁ学校の勉強と一緒にやってるからほとんど寝れてないんだ」
「寝てないの間違いでしょ? 無理やり起きて勉強してる、そうじゃなかったらあのエナジードリンクの数はおかしいじゃん。もう一度言うよ、疲れてるのに休まなかったらいずれ体壊すよ」
もう既に俺の体は壊れているかもしれないが蒼井が言うのなら休むとしよう。そもそも義姉さんは俺に仕事をさせてくれないかもしれないが今後に役に立つ、無駄になることは無いのだ。
「今日も休むけど、明日は久しぶりに遊びに行こうかなぁ。まだ予定は無いけど多分義姉さんに誘われるけど」
「遊びに行くならその前髪はどうにかした方がいいよ?」
勉強を始めてしばらくたっているが髪を1回も切っていないので前髪は目が隠れるところまで伸びている。
「髪切るのは間に合わないしヘアピンでどうにかしとく……。あ、俺ヘアピン持ってないわ」
「じゃあ私のをあげる。近いうちに髪は切りに行くんだよ?」
「ん、ありがと」
正直前髪で目が隠れるのは鬱陶しかったので左側に寄せて蒼井から貰ったヘアピンでとめた。
「まぁ学校でおかしいと思われてもいいや、そもそも髪色がおかしいし。とりあえずいただきまーす」
蒼井が作ってくれた朝ごはんはとても美味しかった、このままずっと作って欲しいくらい……まぁ叶わぬことを願うのはやめておこう。
なんかヘヤピンをつけてから蒼井が一言も喋ってくれない、そんなに似合ってないだろうか?
「さっきから目を逸らしてるけど、もしかして似合ってない?」
「そ、そんなことないよ! 逆に似合いすぎてるから直視できないの!」
「ヘアピンでとめただけなんだけどなぁ……。まぁありがと」
そんな会話をした後に蒼井は帰ってその代わりに義姉さんがやってきた。義姉さんが言うにはちょっと手伝って欲しいことがあるらしい。
「ヘアピンでとめるだけで結構印象が変わりますね。まぁそれは置いておいて、私の友達が吹雪と話してみたいそうなんですよ」
「そうなんだ、でも今日は休まないといけない無いから直接会うとかだったら明日にして欲しい」
「大丈夫です今日は通話だけの予定ですから。私は明日友達と遊びますけどみんなが義弟も連れてきて欲しいと言うので……」
別に義姉さんと遊びに行くことは嬉しい、ただ相手はまだ俺を本当の弟だと思っているので説明しないといけない。まぁ義姉さんの髪は茶色だし俺の髪色と全く違うので本当の姉弟じゃないとすぐ分かると思うけど。
「その時に俺が義理の弟ってことを説明するの?」
「そのことならもう説明してありますよ。明日は単純に一緒に遊ぶためにお呼びしたんです」
義姉さんの友達にどんな人がいるかは分からないがそこは義姉さんがいずれ説明してくれるだろう
「ん、その友達との通話っていつするの? 俺はもうちょっと休んでおきたいんだけど」
「まぁあそこまで勉強してたら疲れますよね。私も同じように仕事をやっていた時期があるので共感できます」
やっぱり義姉さんにはバレていた、義姉さんの仕事が楽になるように俺もできるようになりたいとお母さんに相談したんだから話が漏れていてもおかしくないか。
「じゃあいずれ一緒に仕事をしましょう。まぁ吹雪が大学を卒業してからになると思いますけどね?」
「今から学業と両立させるのは……」
「ダメです、しっかり休んでください。勉強だってもう必要ないくらいには詰め込んであるでしょう?」
確かに俺は高一の範囲だけではなく高三の範囲まで勉強した上で社会の勉強をしている。傍から見ればもう必要は無いほどには勉強してるがそれでも勉強しておいて損は無い。
「昼頃に通話する予定ですのでそれまで私は仕事をしておきますね。吹雪は絶対に休んでおいてくださいね?」
「分かってる、自分でも今はヤバいって思ってるから」
そして俺は久しぶりに休み始めるのだった。
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