第32話 義姉さんと買い物

俺はショッピングモールに来たのだが何故か義姉さんが気づけば近くにいた。


「義姉さんと一緒にいるとなんか面倒なことになりそうなんだけど?」


「そう言っていますがなんだかんだ吹雪は一緒に買い物をしてくれるじゃないですか。そういうところは結構女の子に好かれる部分なんですよ?」


やっぱり女の子っていうのはよく分からない。


というか俺が関わってる女子は人気な人しかいないのでここで学校の人と会ったら面倒くさくなるけど義姉さんだし大丈夫か。少なくとも蒼井が今日、家に泊まることを知られるかよりは幾分マシだろう。


「義姉さんってさクラスの人達に俺のことを話したりしてる?」


「急に居なくなったので寂しいという話はしてましたけど……今の吹雪の苗字って白神じゃないで、私は時雨じゃないですか? その変わった理由は説明してないんですよね……。クラスの人達は吹雪のことは本当の弟だと思っていますよ」


それだったら義弟ということを把握してもらわないと少し混乱が起こってしまう。学校で俺は白神吹雪なのだが義姉さんの友人達は俺のことを時雨吹雪だと思っているということだろ? もし関わるようなことがあったら説明が長くなってしまう。


「義姉さん、俺が義理の弟だってことを伝えてね。説明のために俺を呼んでもいいからなるべく早めに」


「説明だけなら私だけで十分ですよ。何故か私の話を疑おうとする人はいませんし」


それは絶対に時雨家のお嬢様だからだと思うがそれを言ったら俺が弟だと思ってる義姉さんの友達は俺に対してもそういう対応を取ってしまうのか……。俺は義姉さんみたいに丁寧な口調じゃないし時雨家の人間じゃないってことは話してみればすぐに理解してくれるでしょ。


苗字が違うことを色々突っ込まれそうだが今はどうでもいいだろう。


「私が払いましょうか?」


「いや払わなくていいよ。生活費はそっちから貰ってるわけだし義姉さんにこれ以上お世話になる訳には行かないからね」


既に義姉さんの方から生活費を貰っているのにさらにお金を払ってもらうわけにはいかない。


せっかくだと思って来週の分まで買ったのが普通に間違いだった。持てないわけじゃないけど夏休みの前に教科書を全部詰め込んだランドセルぐらい重い。


「そういや義姉さんはなんで着いてきたの?」


「このまま吹雪の家に行って仕事でもしようかと思っています。家だとちょっと堅苦しいのでたまには気分転換にでもと思ったんですが」


「別にいいよ、あの家は義姉さん達が買ったものだから義姉さんの家でもあるでしょ?」


たまに喫茶店に居座って仕事をしてる人を見かけるけど義姉さんが俺の家に仕事へ来るのはそれと同じ感覚なんだろう。


帰ってきた頃には俺の肩がお陀仏になっていたが蒼井の為だと思えばお陀仏になっても悔いは無い。そういや義姉さんは仕事しに来たって言ってたけどご飯はどうするのだろう?


「義姉さん、ご飯はどうする? 今日1日なら菊池さんも許してくれると思うけど」


「菊池さんは過保護すぎると思うんですよ。栄養バランスの為に必ず家で食べて欲しいと言われましたし……悪意がないのはわかってるんですけど、たまには違うところで食べたいです」


お金持ちは生活が楽そうという人が多数いるが一般人からしたらそう言いたくなるのは分かる、俺も元は一般人だったから。ただ実際お金持ちのような生活になると案外自由がないものだ、義姉さんのように外食を禁止されることもあるし他のところでは恋愛禁止で許嫁が決められてる家もあるらしい。


それに大体のお嬢様は居場所が従者にバレている。まぁ身の安全のためなのだがそれが裏目に出ることは多々ある。


「別に俺の家だし菊池さんが何か言うことは無いでしょ? それに俺が作る料理って桐木さんに習ったやつだから」


「それだったら大丈夫ですかね……?」


桐木さんとは時雨家で働いてる凄腕のシェフである。一人暮らしを始めることを知った桐木さんが自ら教えたいと言ってきたのである。


「待たせてごめんね蒼井。今から作り始めるから義姉さんと話してて」


「えっ!?」



※※※



「ええっと、蒼井仁愛です……」


「知っていますよ、私は吹雪の義姉の時雨綾乃ときさめあやのです。いつも吹雪と仲良くしてくれてありがとうございます」


なんか目上の人と話すのは初めてなので緊張するし、なんなら学校の先輩でもあって吹雪くんのお義姉さんでもあるなんて緊張する理由が3つも揃ってしまってる。


「別に緊張しなくてもいいんですよ、同じ学校でもあるんですから。それに……もし吹雪と付き合ったのなら私と深い関係を持つことになるので今のうちに仲良くなっていた方が楽だと思いますよ?」


……そういや私って吹雪くんのお義姉さんの前で惚れさせるって言ってしまったんだった。普通に吹雪くんの家族の前で吹雪くんのことが好きですと暴露してるようなものである。


「私は応援しますよ、吹雪のことをちゃんと見てくれる人は少ないですから。蒼井ちゃんも小学生の時に吹雪がいじめられた事は聞いていますよね?」


綾乃さんは話を続けようとしたけど吹雪くんが「ご飯できたから来てー」と声をかけてくれたのでこの話は一旦お預けとなった。


「頑張ってくださいね、吹雪は過去に色々ありますからなかなか簡単には落ちてくれませんよ」



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