第24話 体育祭③

見た目だけで判断して着いてきてしまったが、誰かの親かもしれない可能性が出てきた。体育祭は親の観戦はOKだし、ちょうどあんな人を護衛を付けてそうなお嬢様がこの学校にいる。


別に仲がいいわけじゃないしそもそも会ったことは無いがこの学校ではとても有名な人で1年の俺たちにも噂が入ってくるほどだ。


ただ、護衛ならその護衛対象から目を離していいものなのだろうか? トイレならグラウンドに設置されているのでわざわざ中に入る必要は無い。


(んー、俺が警戒しすぎかなぁ。実際まだあの人は何もしてないけど)


事件は起きてからじゃ遅いと思うが、ただの決め付けで行動するのもダメだと思うのでとりあえずグラウンドに戻った。


「おかえりー、もうちょっとで借り物競争始まっちゃうよ。準備しなくていいの?」


「借り物競争ってそんな白熱する競技じゃないしお題次第でゴールできない可能性もあるからね。そういうお題が来たら誰を連れてこうかな……」


気になってる人とか、好きな人とかのお題が来たら普通に困るが誰かを連れていかないとチームとして負けてしまうので誰かを選ばないといけない。


ただそうなった時に俺が連れて行けるのは紅葉か蒼井か奏音の3人だけ、知人が少ないのがここで仇になってしまった。


そもそもそんなお題が来ると決まったわけじゃないが来ないとも言いきれない。


「僕のことは気にしなくていいよぉ。二人三脚があったし十分だと思うからねぇ」


「まぁいいや。そういうお題が来てから考えるよ」


今やっている競技が終わったので俺は待機場所に向かったが案の定知ってるやつは一人もいない。


とりあえず始まるまで何も考えずに待っていると1番前にいた人たちが走り出したので始まったのだろう。


(……先輩の近くにいるしやっぱり護衛の人だったのかな。まぁ明らかに一般の人より強そうな見た目してるし多分そうでしょ)


そんなことは置いておいて、次が自分の番なので立って待っておく。


そして前の人が全員ゴールしたのでスタートの合図が鳴らされてみんなが一斉に目の前にある机に走っていく。


とりあえず適当に封筒を取って中身を見てみる。


───仲のいい人


とりあえず奏音達のいる方に走っていくが3人の中から誰を連れていけばいいんだ?


仲の良さに順位をつけないし3人とも仲がいいと思ってるがその中から1番を決めるとなると悩む。ただ、蒼井を連れて行ったらクラスの男子たちが面倒くさいことになるし、奏音は気にしなくていいと言っていたことを考えると、答えは決まっている。


「紅葉、お題に適してるから着いてきてー。怪我で歩くのが辛かったらおんぶするけど」


「もうやってるよね!? 吹雪は恥ずかしいとか思わないの!?」


「恥ずかしいからって怪我してる人を歩かせるたり走らせたりはしないから。まぁ付き合ってるって勘違いされてるし大丈夫でしょ」


俺が蒼井などをおんぶすれば話題になると思うが紅葉とは付き合ってる勘違いされているのでおんぶをしても不思議に思われないということだ。まぁ紅葉が小さいからおんぶできてるというのもある。


余計に勘違いされそうだが、これだけは言っておこう。俺たちは一言も付き合ってると口にしてはいないと。


「いやぁおんぶしてやってきた人は初めてですよ。それじゃあお題を確認するので封筒を渡してください」


「どうぞ」


というかどうやって他人の仲の良さを確認するんだと思ったがおんぶしてるなら仲はいいと思われるか。


「OKです。あなた達は3位です、全てのペアがゴールするまで終わりませんがテントに戻っていてもいいですよ」


俺はそのまま紅葉をおんぶしたままテントに戻るが選択を間違ったかもしれない。


テントの中にいる男子たちからより一層付き合ってると思われてしまった。いずれ否定しておかないとな、紅葉も俺と付き合ってると思われてるのは面倒くさいと思うし。


「怪我してるからおんぶしていったんだねぇ。でも普通にできるようなことかなぁ? やっぱり噂は本当だったのぉ?」


「噂は噂だよ、付き合ってない。俺が付き合うことは今後一緒ないね、少なくとも1年のうちは絶対にないって言えるかな」


いつからこんな噂が流れてるか知らないが恐らく学校が始まった初日から一緒に登校したので4月ぐらいから噂は立ち初めていたんだろう。


否定しても噂は消えないので無視してるが、彼女がアメリカから帰ってきたのならしっかりと否定しないとダメだ。


「恋愛に興味がないって珍しいね、私の周りには転校初日からいっぱい付き合いたいっていう男子が来たよ?」


「まぁそれは蒼井ちゃんだからでしょ。私は男子とは無理だし、奏音は友達になりたいっていう人が多かったかな」


紅葉は結局のところ男性嫌いは克服できなかった。


「紅葉も暴言を言わずに挨拶ぐらいならできるようになったんだから、会話できるようになれば告白されるでしょ」


「いやぁ、当分は無理かな。男子のことは全然分からないから……」


紅葉が俺以外の男子と楽しそうに話してる姿を想像してみるが、それを現実で見れる日はいつになるのだろうか。


俺が出る残りの競技は騎馬戦だけなのでまたしばらく休憩があるのだが……。さっき紅葉をおんぶしたが騎馬戦で蒼井をおんぶするってことを忘れていた。


話題になりそうだなと思う吹雪であった……。

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