【第一話完結】異世界TS召喚 ―お嬢様言葉でバフがかかるスキルで世界を救えって? ふざけるんじゃねえ、ですわ―

枢ノレ

プロローグ


 ゴブリンが次々と襲いかかってくる。キモいし臭い。あと怖い。


「うぉおおおっ!」


 俺はそんなゴブリンたちを近づかせまいと、ロングソードを振り回し――


「佐倉ぁ! 怖い! 助けてくれ!」


「馬鹿! わたしだって普通に怖いよ!」


 俺の唯一にして唯一の――つまりたったひとりの友・佐倉法子が、やたらかっこいいバスターソードを腰が引けたすこぶるかっこ悪いポーズで振り回しながら叫び返してくる。


「もう出し惜しみしないで使ってよ、チート! このままじゃわたしたち死んじゃうよ!」


「それはそれで俺の心が死ぬんだ!」


「そこは割り切って死んでもろて! 少なくともわたしは生きる。それとも椎名はゴブリンのママになりたいの?」


「お前、憶えとけよ……!」


 俺はそんな佐倉に呪詛を吐き――


「おーほっほっほっほ!(やけくそ)」


 高笑いを上げる。その瞬間、俺のチートスキル【優雅たれエレガンス】が発動し、襲いかかってきていたゴブリンたちがびくりと震え、動きを止める。


「わたくしはお嬢様ですわよ~!」


 その隙を逃さない――一番近くにいたゴブリンにロングソードを思い切り突き込む。スキルで強化された身体能力はたやすくゴブリンの頭蓋を砕いた。きっしょ。手応えもキモいし絵面もキモい。なまなましくてなかなかにキツイが、自分の命とは代えられない。


「やった! 椎名偉い! よっ、お嬢様!」


「やかましいわ!」


 同じく動きが止まったゴブリンにバスターソードを降りおろして歓声を上げる佐倉に、俺は万感の思いを込めて怒鳴り返す。途端、【威圧】に気圧されて固まっていたゴブリンたちが動き出す。


「うわぁ!?」


「馬鹿! 椎名、油断しないで!」


「ちっくしょー……おーほっほっほっほ!」


 再び威嚇、スキルが発動してゴブリンたちの動きを阻害する。


「――どうしてわたくしがこんな目に遭わなければならないのかしら~?」


 俺はスキルを維持しながら、自分の運命を呪った。


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