第30話
豪勢な食事に舌鼓を打ちつつ、俺たちと母神様との会話は弾んでいた。
母神様はツナミのことをミーちゃん、ファーティのことをチーちゃん、エアのことをクーちゃんとそれぞれ呼んでいるのだが、彼女たちは名前を呼ばれるたびに顔を赤らめていた。
俺の前では大人ぶって振舞っている三人だから、母神様からの幼いころの愛称を俺に聞かれるのが恥ずかしいんだろう。
「……雄くん、おいしい?」
ステーキを口一杯に頬張る様子があまりにかわいらしくて見つめていると、飲み込んだ母神様が俺に食事の感想を聞いてくる。
「はい、今まで食べたことがないくらいおいしいです!」
実際これほどおいしいものがあるのかと、食事をとる手が止まらないぐらいなのだ。
昔家族旅行で行った高級旅館の食事が過去一番だと思っていた俺だったが、その記録が今さっき塗り替えられてしまったのだ。
「それは良かった!眷属たちもそう言ってもらえると喜ぶわ!」
ニコニコと微笑む母神様は、非常に楽しそうだった。
「そういえば……主神様の事はなんとお呼びすればいいんでしょう?」
未だに俺は母神様の呼び方に迷っていたので、思い切って聞いてみることにしてみたのだ。
「そうねぇ……やっぱりママかしら?」
頬に手を当て首をかしげる仕草がやっぱり色っぽい母神様の口から、とんでもない言葉が飛び出してきた。
「……この年になってママ呼びは恥ずかしいので、できれば別の呼び方が良いのですが……」
「そう?」
あまりに恥ずかしかったので別のを要求したのだが、数秒悩んで母神様は口を開いた。
「外ではアースって名乗ってるから……アースお母さんって呼んでくれると嬉しいわ。……はい、あ~ん」
母神様改めアースお母さんは、斜め前にいる俺の口に向かってステーキを運びながらニコニコと俺の目を見つめてくる。
「あ~ん……とってもおいしいです、アースお母さん」
「うふふ……よかった♪」
そんなこんなで楽しい食事の時間は過ぎ、食卓に並ぶお皿の上から料理がすべて消え去ったので、食後のティータイムに移り、本格的に今後についての話し合いを始めるらしい。
「改めてミーちゃん、おめでとう……異界から避難民を受け入れるって話を持ってきたときは何事かと思ったけど、念願がかなってよかったわね?」
「……はいお母様、私は今とても幸せです!」
ムンさんが絢爛なソーサーに紅茶を注いでくれてそれを楽しんでいると、突然立ち上がったアースお母さんが、ツナミの頭を撫でながらおめでとうと言っていた。
「アースお母さん、俺ツナミたちの事絶対に幸せにして見せますから」
「今でもこの子たちは十分幸せそうだけれど……そうね、お願いするわね?雄くん?」
立ち上がって先制した俺の頭を豊かな胸に抱え込み、耳もとで甘く囁くアースお母さん。
……すごい呼吸しづらいんだけど、すごい幸せな気分だった。
「折角だから母も我らと一緒に坊の異空間で過ごさんか?……ムンもつれて行けば、こちらとの行き来も楽であろう?」
「雄くんの所に……確かにお仕事は眷属たちが頑張ってくれるし、何かあってもすぐにここに来れるから……そうね、クーちゃんの案採用で」
まさかここまで話が淡々と決まっていくと思っていなくて困惑している俺だったが、アースお母さんと話しているツナミたちはとても楽しそうだったので、確認のために俺の方を向いたアースお母さんに向かって、激しく頷いて見せた。
「決まりね!」
嬉しそうに手を合わせるアースお母さんに、またしてもアトランティスが豊かに賑やかになっていく確信を得た俺なのであった。
食後のティータイムも終わり、とうとう楽しかった昼食の時間もお開きとなった。
帰り際、アースお母さんと眷属筆頭のムンさんの二人をテイムすることになったのだ。
やはり彼女たちにとっても俺の魔力は魅力的だったらしく、定期的に魔力がもらえるのことを確約されているテイム契約には快く応じてくれた。
そしてムンさんに転移で実家に送ってもらう際、アースお母さんから熱い抱擁を受けた。
「今夜は早速私もそちらにお邪魔するわ……楽しみにしていてね?雄くん♪」
それは今日一番の色っぽい声と目だった。
谷間から見上げた俺の瞳にうつる彼女の顔には、溢れんばかりの情欲の念が見て取れたのだった。
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