第27話

 手先が器用なファーティに三色のメッシュを三つ編みに結んでもらい、竜司たちとダンジョンに向かうための準備をしながら、エアに今朝のことについての話を聞くことにした。


「それで?どうしてエアは回りくどいことをしてたの?」


 ツナミやファーティを経由して、俺と接触することは容易だったらしいのだが、わざわざ俺が行くダンジョンを先回りし改築、自身が干渉するための依代に俺を誘導して今朝の夢に至るというわけだそうだ。


「別に……我はこれが最善だと思っただけだ。 海のと大地のに邪魔されず、坊に我を刻み付けるにはこれしかないとな?……最後にちょろっとだけポカをしただけで」


 エアにとって一番重要だったのが、俺に加護をつけ直接のつながりを作ることで、単に接触するだけではツナミやファーティに邪魔されるかもと思ったそうだ。


 別に俺を守るために色々してくれているツナミは、普通に受け入れてくれそうな気もしたけど……。


「もう済んだことは良いでないか!……それより坊よ、我の加護がどのようなものか確認しなくてもよいのか⁉」


 強引に話を逸らしたかったのだろうエアが、語気を強めて俺へステータス確認を促してくる。


 確かにいざダンジョンについて確認だと遅い気もするし、今済ますのは実際良い案である。



【名前】河野かわの 雄大ゆうだい

【種族】地球ほしの神子

【Lv】137

【職業】神秘のテイマー

【スキル】鑑定CS 槍斧術Lv3 釣りLv1 アイテムボックスLv9 テイムLv14 体術Lv9

【ユニークスキル】海槍之魂 海の神子 釣り竿召喚 アトランティス 海神の抱擁 大地の神子 大地神の接吻 大地の恵槍斧 天空の神子 天空神の愛撫 天空の円環

【称号】世界初のモンスター討伐者 世界初のダンジョン攻略者 世界初のテイマー 海神の神子 大地神の神子 天空神の神子 地球の神子 世界初の上級職業


 槍斧術:槍斧を使った際に敵に与えるダメージをレベルに応じて増幅させる 槍術と斧術の複合上位スキル


 大地の恵槍斧:恵みの槍斧グレイスを召喚し自在に操る者の証 大地への干渉力を増大させる


 天空の神子:自由なる天空と交わった者の証 流れる風を読み自身に向かう驚異の軌道を視る事が出来る 風雷光の複合上位の天空魔法を自在に操ることが出来る 状態異常耐性が大幅に上昇する


 天空神の愛撫:天空の神の愛撫を受け 身体能力・自然治癒力・魔力・状態異常耐性が大幅に上昇する


 天空の円環:天空の神の持つ運命を見通す円環を得た者の証


 地球の神子:母なる神の愛を一身に受けた者の証 ――――――――――


 世界初の上級職業:世界で初めて職業のランクアップを果たした者の証 レベルが上がりやすくなる



 また種族が変わってる……地球なんて更にスケールが拡大した気がするし。職業も勝手に上級職になってるし鑑定に至ってはカンストしてる表記まで出ている。


 まだ一週間しか経っていないのにこのインフレぐあい……いろいろ大丈夫なんだろうか?


「現実はゲームじゃないって分かってるんだけど……バランス大丈夫なの?」


「坊はバランス調整の枠外であろうよ……だから何も気にすることはあるまい」


「そうで御座います旦那様!旦那様は怪我なく健やかに過ごせるよう、いっぱい私たちに甘やかされればよろしいので御座います!」


「あぁ、その通りだな。雄大が自ら危険を冒す必要はもうないのだから」


 少し心配になって出た俺のボヤキに、女神さまたちが俺をとことん甘やかすと宣言を返してくる。


「坊に波乱万丈はもうやらぬ……常に我の軟肉に包まれていればいいのだ」


「それはお前が単に雄大とヤりたいだけだろう!天空の!」


 俺の首に腕を回し、耳元でささやくエアのことを叱責するファーティ、それを一歩引いてニコニコ見守るツナミは、一番乗りの自負があるのか余裕の表情を見せているのだろうか。


「そう言えば坊、今日の昼は時間が空いておるだろう?」


「まぁ、明日の準備もそんなに時間がかからないだろうし、時間は空いてるだろうけど……何かあるの?」


 抱き着いたまま離れないエアが、時間があるか聞いてくる。


 竜司たちとのダンジョンは午前中だし、日曜の東京遠征の準備なんて一時間もあれば済んでしまう。


 なので昼から潤沢に時間があると頷いたのだが、一体何をする気なんだろうか。


「それなら我らの母にもあっておくと良い……きっと母も喜ぶ」


「まぁ!それは名案で御座いますね!お母様も私の話に興味津々でしたし、きっと喜んでくれると思うで御座います!」


 エアの急な提案に戸惑っていると、両手を合わせて喜びを表すツナミに無言でうなずくファーティと、戸惑う俺をよそに三人で盛り上がりを見せていた。


「三人のお母さんがいるの⁉称号から察するに地球の母神って三人の事じゃないの?」


 母なる神の愛を一身に受けているという称号の文言通りなら、彼女たちがこの地球の母神ということになるのではないのか?


 そんな疑問に答えてくれたのは、やはりツナミだった。


「私たちも無から生まれたわけではないので御座います。お母様がこの地球を創造する際生み出した、地球の母なる神が私たち三柱であるというだけで御座います」


 つまり地球を作ったのはツナミたちではなく件のお母様なる神様で、母神様が地球で一番偉い神様であるということだった。


「別に会うのはいいけど、急に会いに行って大丈夫なの?一番偉い神様なんだったら忙しいんじゃないの?」


「大丈夫だろう……母上は昔から仕事をあまりしないお方だったから、きっと今も暇を持て余しているはずだ」


 ……やっぱり地球の神様だから、母神様もちょっとポンコツな方なのだろうか?


 期待と不安がないまぜになった奇妙気持ちで朝を過ごす俺なのだった。

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