君は熱しやすく火照りやすい

僕だって…

ウリと、碧琉へきるは、小学校からの幼馴染だった。2人はいつもいつも一緒にいた。まるで、どちらかが女で、どちらかが男…つまり、男女の境無しに、仲の良い幼馴染だった。


小学校2年生の時、ちょっとした出来事が起きる。ウリが、帰り道、『今日は妃美ひみちゃんと帰る』と言って、碧琉とは一緒に帰らなかった。そして、放課後、掃除当番だった碧琉は、教室のロッカーの前で、見慣れたハンカチを見つけた。


(これ、ウリのだ…)


それに気づき、次の日、洗って、母親にアイロンまでかけてもらって、ウリに渡した。


「あぁ、ありがとう」


「うん」


もっと喜ばれるか、と思ったが、そうでもなかったので、正直、碧琉は、残念に思った。


しかし、成長するにつれて、状況はさらに変わってきた。それは、小学校4年生の時。4時間目が終わり、お昼休みになり、ウリは、トイレへと立った。


その帰り、ウリは、なんの気なしに、ハンカチを廊下に落としてしまったのだ。すると―――…。


「ウリちゃん、ハンカチ、落としたよ!」


(!確か、4組の田川たがわ君…。前々から格好良いな、って思ってたんんだよね…。ハンカチ拾ってくれるなんて、なんて優しいんだろう…)


あっという間に、ウリの瞳は恋する乙女になった。


「ありがとう!田川君!」


こうして、初恋は花開いたのである。


そして、その帰り道、ウリは、その事を碧琉に話した。


「優しいと思わない?碧琉!しかも、<ウリちゃん>だって!ウリ、もう好きになっちゃった!!」


「へー。良かったね」


「なに?碧琉、なんか冷たい!」


ウリが不満そうに、碧琉にきつく当たった。それで、


「あ、いや、そんな事ないよ!!良かったね、本当に。上手く行くと良いね」


と、碧琉は、慌てて笑顔を作った。


碧琉が、素直に喜べないのも無理はない。2年前、全く同じ事…どころか、もっと丁寧に自分はウリにハンカチを渡したのに、この違いは何なんだろう…?と。


しかし、それで留まれば、なんの問題もなかった。碧琉が、ちょっとヤキモチを焼けばいいだけの話だった。それなのに…。




―2ヶ月後―


「ねぇ!碧琉!聴いて!聴いて!」


「あ、おはよう。ウリ。朝から何?ん?足、どうしたの?」


「あ、うん。聞いてほしいのは、この事なんだけど、今朝ね、うさぎさんのお世話の当番でね、その小屋の中で転んじゃったの。そしたら、7組の竹下たけした君が絆創膏くれたの!優しいよね!」


「…そう…だね…」


またまた、ウリの瞳は、恋する乙女になっている。しかし、ほんの1週間前、一緒に下校していたウリと碧琉が歩いていると、自転車が無理矢理歩道を通って来て、ウリにぶつかりそうになった。咄嗟に、碧琉は、ウリをかばい、自転車にぶつかった。その自転車に乗っていた、高校生らしき男子は、転んだ後、謝りもせず、


「ちっ!」


と、舌打ちを残して、怪我をした碧琉とウリを放って、去って行ってしまった。


「う…うあーん!!いたーい!碧琉ー!」


「だ、大丈夫か?ウリ。ほら、これ、絆創膏。今、張ってあげるから…」


碧琉は、自分の傷も後回しに、とにかくウリを泣き止ませる事と、傷に絆創膏を張るのを優先した。


それなのに、泣き止んだウリは、ありがとうも、ごめんねも無かった。


この違いは何だろう?そして、この気持ちは何だろう?何だか、妙にイライラする。


その気持ちを、碧琉が自分で意識し始めるのは、中学に入ってからになる―――…。

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