ミディ水精霊部隊・海で大漁祭りだよ!

 植物園のウオマル海から、遠く東の海域の底に転移門がつながっている。

 そこから海精霊さんたちがハクの植物園に遊びにやってきて、園内の精霊さんたちと仲良くしていた。


 ある日、植物園に住む水の精霊さんが海精霊さんに声をかける。

 もちろん、念話の内容は聞こえない。

 しばらくすると、海精霊さんとともに水精霊さんたちが泳ぎ出し、転移門を潜って東海に向かった。


 水精霊さんの目的はふたつ。

 ひとつは新鮮な魚介類を手に入れること。

 もうひとつは、この転移門がある場所に眠っている、大量の青色サンゴを採取することだ。


 まずは、植物園で消費される魚介類の漁をしよう!

 大きな回遊魚はこの周辺でも捕獲できるけれど、大きなエビを捕るには南の海へ、ホタテなどは北海まで行かなければならない。

 水精霊さんたちは海精霊さんたちの案内で、大海に散ってゆく。



 そのまま海底を南下した精霊さんたちは、大きなシーサーペントに遭遇した!

 みんなで協力してこの大海獣と戦い、見事勝利を収めた!

 海中を四方八方に飛びまわって大喜びしている。

 興奮が収まると、仕留めたシーサーペントはマジックバッグにしまって、もっと南の海へ進んだ。

 目指すは巨大スパイニーロブスター。

 ハク様の大好物なので、たくさん捕って帰りたい!

 水精霊さんと海精霊さんたちは、魚雷のように海中を驀進ばくしんした!


 一方、さらに東の大海原に乗り出した精霊さんたちは、回遊魚を生け捕りにしてウオマル海に転送していく。

 魚群を発見すると、早速メエメエさんから預かってきた転移門を展開して、どんどん吸い込んでいく!

 魚たちは逃げようとするも、あっという間に吸い込まれてしまった!

 うっかりイルカを吸引しそうになったので、精霊さんたちは慌てて転移門を閉じていた。

 さすがにイルカやクジラやサメは要らないかな。

 シャチなんてもってのほかだよね。


 海岸線に沿うように北上した精霊さんたちは、大きなホタテやウニを捕獲していく。

 ホタテもハクの大好物なので、より大きなものだけを捕っていく。

 途中でイカの群れを発見したので、それも捕獲しよう!

 イカはメエメエさんの大好物だから。

 ホタテの海ではコンブも採取していくよ。

 大忙しだった。


 その最中に、カワウソさんに似た精霊さんに出会ったので、きっちり挨拶するのを忘れない。

「気にするな~。ホタテとウニは取り過ぎるなよ~」

 そう言って海面をカチカチしながら漂っていたよ。

 精霊さんたちは全員で手を振ってお見送りをした。



 それぞれの方向で漁をしてきた精霊さんたちは、合流してお互いの成果をたたえ合った。

 最後は転移門のそばで青色サンゴを採取する。

 青色サンゴは海の魔力の結晶体で、きれいな海底の底に極稀にできるものだ。

 この場所は元海竜のウオマルさんの住処だっただけに、魔力が集まりやすいようだね。

 さらに植物園の転移門があるおかげか、青色サンゴが増殖している気がする。

 最高品質の青色サンゴは澄んだ青をしていて美しい。

 まるで宝石のようだね。

 うっかり触れると魔力が奪われてしまうので、道具を使って慎重に採取していく。



 さて、今日の目的が終わったら、今度は自由時間だ。

 だけど良い子の水精霊さんたちは、遊んだりせずに、近辺のお宝探しに出かけた。

 ここよりももっと深い海に渓谷があるのだと、海精霊さんに教えられたから。

 海精霊さんの先導で海溝に潜っていくと、もう光は届かない。


 けれど心配することなかれ。

 ラビラビさんから借りてきた魔導ライトを灯せば、周囲が明るく照らされる。

 その光に反応して、海溝の底から巨大クラーケンが姿を現した!

 精霊さんたちはひとりでは小さな力だけど、大勢で力を合わせれば巨大クラーケンにも負けはしない!

 海精霊さんたちの力も借りて全員で懸命に戦い、激戦の末に、勝利を収めることができた!!


 怪我をした精霊さんは自分のポシェットから、ラビラビさん特製の魔力回復キャンディを取り出して食べると、瞬く間に傷が治り、元気を取り戻していた。

 幸い消滅した精霊さんはひとりもいなかった。

 みんなもしっかりパワーアップしているね!


 その後は、手分けして周辺の岸壁をくまなく調査してゆく。

 光輝くもの、魔力を帯びているもの、気になる鉱物を発見すると、とりあえず採取してみる。

 持ち帰ればラビラビさんが吟味してくれるから大丈夫。

 

 目の前を海龍モドキ(リュウグウノツカイ)が悠然と泳いでいったり、巨大魔イカ(ダイオウイカ)に襲われたり、深海は危険で不思議がいっぱいだった。

 精霊さんたちはハラハラドキドキを楽しんだあと、笑顔で植物園への帰路についた。



 ウオマル海に戻って砂浜に上がれば、ほかの精霊さんたちが出迎えでくれる。

 捕った魚介類はお食事処の精霊さんに、そのほかのものはラビラビさんラボの精霊さんが預かっていく。

 仕事を終えた水精霊さんと海精霊さんたちには、たくさんのご馳走が用意されていた。

 みんなは仲良く分け合って、楽しく食事を楽しんだようだ。

 働いたあとに飲むラドベリージュースは格別だよね!



 ***


 そのころのラビラビさんは、ラボで雄叫びを上げていた。

「なんとこれはシーサーペントですね! こっちはクラーケンですかッ!!」

 ラビラビさんが叫んでいるあいだにも、ラボで働く精霊さんたちがサクサク解体を進めていく。

 ここで働く精霊さんたちは慣れたものだ。

 ラビラビさんには目もくれず、素材を仕分けしてゆく。

 みんなドライだね!


「おお! これは見事な深海夜光貝ですね! しかもなんという大きさ!! こっちの大きく美しい宝珠は桃色真珠ですね! 私の頭ほどの大きさがありますよ!?」

 光り輝く薄紅の真珠を掲げ持って、ラビラビさんは息を飲んでいた。


「こっちは何かの海獣の骨でしょうか? 魔石もありましたかッ! これほどの巨大魔石がゴロゴロと落ちているとは、深海はまさに宝物庫ですね!! 嗚呼! こちらは深海黒色水晶…………!!!」


 そんな感じで、ラビラビさんがハイテンションで一晩中飛び跳ねていたとか。

 兎だけにね。



 なお、これらの品が役に立つ日が来るかは、だれにもわからない。

 スキル倉庫の管理人ソウコちゃんは、せっせと品物を仕分けて片づけながら、目録を作ってゆく。

 そして暗い倉庫の片隅で小さくつぶやくのだった。

「不良在庫の山が増えました……」


 宝の持ち腐れみたい。


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