ダルタちゃんの冒険 前編

 タックンとドリーお婆ちゃんと一緒に、初めて人間界にやってきたニャ!

 以前一緒に旅をしたハクちゃんのお家に遊びに行くんだニャ。

 パパから人間界で商売してくる品物をたくさん預かって、マジックバッグにしまったニャ。

 お腹に赤ちゃんがいるママは、ボクの旅立ちをすごく心配していたニャよ。

「大丈夫ニャ! タックンもドリーお婆ちゃんもいるニャ。妖精王様からもお守りのミサンガをもらったニャよ! 人間界でたくさん変わったものを仕入れてくるニャ!! ボクもお兄ちゃんになるからしっかりするんニャよ!」

 胸を張って言うと、ママはうれしそうに抱きしめてくれたニャ!

「赤ちゃんが生まれるまでには帰ってくるニャ!」

 ボクは元気にお返事したニャ!!

 楽しみニャ!



 人間界は妖精界と違って季節がハッキリしているニャ。

 初めて雪を見て、寒さに驚いたけど、すぐにハクちゃんと兄さんたちに会えてうれしかったニャ!

「こんなに早く合流できるなんて、運が良かったね!」

 ドリーお婆ちゃんは樹の妖精だから寒そうにしていたニャ。

 タックンはハクちゃんに抱きついて泣いていたんだニャ。

 ボクも兄さんたちに挨拶して遊んでもらったニャよ!

 テシテシされたニャ!



 さっそくハクちゃんのお家に招待してもらったら、そこはなんと大きな異空間の植物園だったニャ!

 大きな湖があって、そこでおいしいお肉をたくさんご馳走してもらったニャ!

 ああ、このお肉の味が忘れられなかったニャ!

 ドリーお婆ちゃんも「この味が忘れられなかったよ!」と、ボクと同じことを言っているニャ。

「当然ニャ」

 クロちゃん兄さんがそう自慢気に言っていたニャ。

 さすがは猫族のスターはカッコいいニャ!!

 シロちゃん兄さんもボクの顔を舐めて毛繕いしてくれたニャ。

 幸せだニャ~ン。



 翌日には妖精界から持ってきた品物を敷物に並べて、露店を開いて販売したニャよ。

 これがボクの初商売だったから、バートンさんやハクちゃんのパパさんに一生懸命に品物の説明をしたニャ。

 バートンさんは魔道具を、パパさんは魔導武器を全部買ってくれたニャよ!

 ありがとうニャ!


 ハクちゃんと精霊のおじいちゃんたちも、食器やアクセサリーや小物を買ってくれたニャ。

 精霊のグリちゃんたちも、それから植物園で働く小さな精霊たちも、みんな品物を買ってくれて、持ってきた商品が全部売れてしまったニャ!

 ボクには商才があるニャよ!!


 パパさんのお買い物は、妖精硬貨とウォーター・リーパーの素材で支払ってもらったニャ。

 バートンさんとハクちゃんたちのお買い物は、植物園内の品物と物々交換してもらうことになったニャよ。

 翌日から植物園内に出かけて、いろんなお店を巡ったニャ!



 メエメエさんが最初に案内してくれたのは、服飾工房だったニャ。

「ここには人間界のあらゆる布製品があります。ご家族のお土産にいかがですか?」

 メエメエさんと店員さんが草木染の布を見せてくれたニャ。

 そこには見たこともない花の模様が描かれた布もあって、ボクはビックリしたニャよ!

「こちらは南国のハイビスカスという花を大胆に描いたアロハシャツです。カラフルな色と柄が珍しいと思いますよ!」

 ニャニャ!

 白地に真っ赤な花柄は斬新ニャ!

 こっちは黄色地にヤシという木の柄!

 黒い生地には鮮やかなヒマワリの模様が大胆にあしらわれているニャ!

 あまりの種類の豊富さに目移りしてしまったニャ!!

 いろんな生地のシャツとスカートを買って、マジックバッグにしまったニャよ。

 お買い物は楽しいニャン!


 次の日はガラス工房にやってきたニャ。

 向こう側が透ける薄いガラスに驚いたニャ。

 丸いフォルムにスッと伸びた足のおしゃれなグラスを購入したニャ。

 ガラスやクリスタルで作った動物の置物や、シャンデリアもまぶしかったニャよ。

 中でも目を引いたのが、鮮やかな色と模様が素晴らしい、切子細工のグラスや食器だったニャ。

「これはお土産に買うニャよ。青はパパで、赤はママニャ。ダルタは緑で、赤ちゃんはオレンジ色にするニャ!」

 ウキウキ気分で大切にマジックバッグにしまったニャン。


 そのあともいろんな工房を巡ったニャ。

 お酒工房ではさまざまなお酒を少量ずつ買っていくニャよ。

 ボクは飲めないから、パパに飲んで確認してもらうニャ。

 気に入ったものがあれば、次に来たときに買えばいいニャン。

 妖精王様にはお店で一番高いお酒を買っていくニャ!

「一番高いお酒ですか……」

 メエメエさんは悩まし気に考え込んで、それからたくさんのお酒を出してきたニャよ。

「こちらは妖精界でのお近づきのしるしに、私たちからのプレゼントとさせてください。

 清酒の大吟醸に、三十年熟成のブランデー、ワイン各種になります」

 店員さんがマジックバッグにしまうのを手伝ってくれたニャ。


 気づいたら、マジックバッグがいっぱいになってしまったニャよ!!

 ガガ~ン!!

「それでしたらこちらでマジックバッグをお貸しいたしましょう。次回来たときに返していただければいいですよ。それまでは向こうでもお使いください」

 メエメエさんがそう言って、シンプルなかぶせのマジックバッグを用意してくれたニャ!

 メエメエさんは良い羊ニャ!


 翌日からは野菜や穀物の畑を巡ったニャ。

 見たことのない野菜や果物があって驚いたニャ!

 輝く翡翠ブドウは種も皮も食べられて、しかもすごく甘くておいしいニャ!

 白桃も大きな実で豊かな香りにとろけそうになったニャ!

 もちろん味も絶品だったニャ!!

 中でも一番はラドベリーという十センテもあるような、宝石のように輝いたイチゴだったニャよ!!

 甘さと酸味が絶妙のバランスで、しかも上から下まで全部おいしいニャ!

 神の果物かニャ?!

「まだまだリンゴやミカンに、南国のバナナやマンゴーといった、素晴らしい果物がありますよ! ジャンジャン持っていってください!」

 メエメエさんに言われるままに、ボクはドンドンマジックバッグにしまっていったニャ!



 また別の日はお茶畑やコーヒー農園を巡り、試飲をさせてもらってから、紅茶と緑茶とココアとコーヒー豆を購入することに決めたニャ。

 木の実農園でもたくさんの木の実を仕入れたニャ。

 穀物倉庫では小麦と大麦が入ったマジックバッグを渡されたニャ?

「こんなにいいのかニャ?」

「いいんです、いいんです! 在庫が余っていますからね! お米もお譲りしたいところですが、文化圏が違うと召し上がらない場合もありますから、今回はやめておきますね」

 メエメエさんは鼻歌交じりでそう言ったニャ。

 ありがたくもらっておくニャよ。 

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