向日葵とリセット
鳥羽フシミ
向日葵とリセット 一話
たぶん、その日から姉の時間は止まってしまったんだ。
生まれた時からいつも一緒だった私の姉は、どちらかといえば母親似だった。容姿こそ母とは似ても似つかないけれど、困った時に眉間に寄る皺の形や、笑う時に最初ブッと吹き出す癖。そして悲しい時に笑う癖。そんなところが姉と母はそっくりだった。そして、その他にも箸の持ち方から、食べ物の好みまで似ている所を数えだしたら切りがない。
母が死んで塞ぎがちだった私を、いつも姉は母のまねをして慰めてくれた。姉だって本当は悲しかったはずなのに、そんなことは微塵も感じさせず、その時の姉の言葉や仕草は本当に明るい母そのものだったのを私はよく覚えている。
私はそんな優しい姉が大好きだった。
でも……
私が姉の異変に気がついたのは、私が中学生になって最初の年の夏。母の命日に父親と一緒にお墓参りに行った日の夜の事だった。その日も父と私は母のお墓の前へ彼女が大好きだった向日葵の花を供えて帰宅した。そしていつものごとくモニター越しに明るい姉が笑顔で迎えてくれて……。
その時。私は、ふとした違和感を覚えていた。
そう言えば、姉は去年もこんな風に私達の事をでむかえてくれて……。
そうだ。全く同じなんだ。
たぶん、このあと姉は「お母さんの向日葵は今年も元気に咲いていたかしら?」って、きっとそう言うはずなんだ……。お母さんのお墓の横に植えられていた向日葵の畑は、もう3年も前に整地されて無くなっているというのに。
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