ギター星人
僕はギター星に住んでいるギター星人。僕はどこにでもいる、ありきたりで凡庸なギター星人の一人だ。
ギター星人の体は音とリズムでできている。ギター星は勿論ギターでできている。ギター星にもたくさんの国があって、それぞれが同盟を結んだり、裏切ったり、関税の撤廃などをしようと頑張っている。正直何故ギター星人がそのような無意味なことに勤勉な姿勢を失ったりしないのか、僕には分からない。僕たちはいくら頑張ったところで、死んだらただの死んだ音とリズムになって、宇宙の塵にしかならないというのに。
我々ギター星人の好きなこと。それは勿論性交だ。ギター星人の性交の仕方は少々変わっていて、オスが自分のメロディーをメスのメロディーの中に入れるのである。そしてそのメロディーが有機的に絡み合い、彼らは極上の快楽を得ることができるのだ。
まぁでも君たちにとっては、ギター星人の性交のことなんかボブディランの祖父のいとこのお気に入りのディナーぐらいどうでもいいことかもしれない。実際それぐらいどうでもよくて、しょうもない話だ。でも、そんなことをほかのギター星人に言ってごらん?彼らは口をそろえて言うだろう。
「それは満たされないが上の嫉妬さ。確かに性交は失敗することもある。成功と発音は同じなのにね。避妊の心配だってしなきゃいけない。しかし、それが素晴らしいことであるのは間違いないだろうね。僕たちが生まれていた理由の一つだもの」
ギター星人には、物の本質を分かってないくせしてインテリぶってるやつがやたらと多い。
ギター星について話そう。この星は小さく、半径は10kmほどしかない。ただすべてのものが全てギターでできている。そしてそれだけ。ギターでできている。そしてギター星人が住んでいる。それだけの星。全ての物が軽くて、空もない。ただ音はある。
僕はある日、自分の音を弾いた。それは今まで生きていた中で最も素晴らしいことだった。でも、みんなはそれを馬鹿にした。というか、評価すらしてもらえない。それだけだった。
ある日、僕は結婚した。そして、どこにでもあるようなどこにでもある中堅メーカーに内定をもらい。子供もできた。自分の音はもう弾かなくなった。
僕はギター星人だ。ギター星人。僕はどこにでもいる、ありきたりで凡庸なギター星人の一人だ。
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