魔法の国の代行屋/銀の森の若長が目覚めるまで
月杜円香
第1話 旅
ティランは、目の前の女の子をガン見してしまった。
緩いカールのかかった薄茶色の髪、茶水晶の瞳。13歳くらいだろうか……
手には、三年前に突然失踪した母の髪飾りが握られていた。
一つしかない。一対で用をなすものなのだが……。高価なものだったから、二つに分けて売った方が、儲かると踏んだのだろうか。
女の子の方もティランを見て、上から下まで舐めまわす様に見ていた。
結構慣れていることだが、面白くはない。
神の家系の銀髪と銀色の瞳を引いてしまっただけなのだから。
そして、東方の美姫ビルラード王国のカタリナ姫を母に持ったティランは、顔も母親似で、その美貌は東方はおろか西域まで轟いていた。
「女の子?銀の姫なの!」
銀の姫とは、ロイル家に生まれた、銀髪、銀の人の女の子を指している。
「いいえ、男です。それよりその髪飾りは、何処で手に入れましたか?」
強い口調で言ってみたが、女の子は、尻込みもせずに言い返してきた。
「大叔母の土産よ、従妹とお揃いなの。従妹は可愛いからこういうの似合うけど、私にはね~」
「一つで付ければ可愛くもなるでしょう。もともと、一対の髪飾りですよ。貴婦人が髪を結い上げた時に、使うんです」
「知ってるみたいね。この髪飾りの持ち主のことを?」
少女が、食い入るようにティランの方にやって来た。
「三年前に突然、行方不明になった母上の物です」
「母上? あの人が?」
「知っているのですか? 母上を」
少女は、少々困った顔をして言った。
「知ってるというか……幻を見たというのか……でも、この髪飾りは手掛かりになると思うの」
「何処で見ましたか?」
「故郷のデュール谷よ。この髪飾りから幻が抜け出して谷の結界を抜け出したの」
「あなたは、どうしてここにいるんです!?」
少女はちょっぴり笑って答えた。
「谷の結界を壊して、学び舎送りになって、退学になって、今は光の神殿から逃亡中って訳」
「行きましょう……」
「え!?」
「僕の名前は、ティラン・マクシム・エル・ロイルです」
「あら、ロイルの若長なのね。私はエリサ、エリサーシャ・フレイドルよ。行くって何処に?」
「母上を捜しに行くんです。今は、守役のジェドも出かけています。さぁ!!」
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