【IF】彼女のデスゲーム
センセイ
IF1 死ねない二人
IF 1-1 生還
目を開けると、そこはどこまでも白かった。
そして……それが知らない天井だと分かった途端、僕の心臓は最悪の想像ではち切れんばかりにドクドクとうるさくなる。
────死に損なった。
最悪だ。
どうして最後くらい、思い通りにいってくれないんだろう。
……そうだ、れいちゃんは?
「っ……!ぁがっ……!」
途端に顔を青ざめて起き上がると、首元というか骨というかに激痛が走って、すぐさま息が荒くなってしまう。
心做しか呼吸が苦しい。
……ダメだ、そんな事考えたらもっと苦しくなってきた。
このまま死ぬくらいだったら、あの時死なせてくれれば……。
そう考えると涙が出てくる。
現実は物語の様に上手くいかないとは言っても、それこそ物語の様な確率で生き残るなんて、そこまでしなくたって良いじゃないか。
嫌だった。
れいちゃんが悪として傷付けられるのを見るのが嫌だった。
せめてもの勝ち逃げをしたかったのに。
憎かった。
人を殺したら、どんな形であれ望む未来には行けないって事?
……冗談じゃない。
僕らは復讐してしまったんだから、また攻撃を受けてしまった時に受け流したり堪えたりする事はもう出来ない。
早く彼女と……れいちゃんとこの世界から飛び降りたい。
「……きゃっ、鈴村さん?!」
……と、そんな事を考えていたら、いつの間にか入って来た看護婦さんらしき人に驚かれる。
「ちょっと待っていてくださいね、今呼んできますから……」
「……」
まぁ……大体分かってはいたけど、こんな時にでも母さんは顔を出さなかった。
母さんはどうして僕を生かすんだろう?
いつも、それだけが疑問だった。
だって、関心が無いなら生きてようが死んでようがどうでもいいんだから、わざわざ病院に入れたりしなくてもいいハズだし、そもそも高校だって通わせなくたっていい話でしょ。
……まぁ、『めんどくさい事』が嫌なんじゃなくて、『僕に時間をかける事』が嫌なんだとすれば、もうどうしようもないけどさ。
「鈴村くん、具合はどうかな」
何だか色々ありすぎて、思考がどうも悪い事にしか進まなくなってしまってるらしい。
僕は気持ちを切り替える様に一呼吸おき、部屋に入るなり話しかけてきたお医者さんらしき人に向かって一番に聞いた。
「あの、れいちゃん……あー、
「……」
僕の言葉に、お医者さんは不穏に黙り込む。
……あぁ……そうか。
分かってたよ、そんな事くらい。
後を追えば良いんだろ。
「残念ですが……」
「……。分かりました」
でも……どうしようか。
身体中痛くてとてもじゃないけど一人で死ねる状態でも無ければ、誰かに殺してなんて頼める訳が無い。
出来るだけ早く行きたいのに、行ける状態じゃないのがもどかしい。
「えー、調子の方はどうですか?」
「はぁ……まぁ、痛いですけど」
「はい。記憶とかの混濁は無いですか?」
「……無いと思います」
お医者さんとの会話中、僕はずっと上の空だった。
こんな時に限って、人は簡単には死ねないんだ。
……僕はたくさん殺したのにな。
殺した人は死ぬんじゃないの?
今の世間一般では、死ぬより重いものは無いんだし……。
……いや、待てよ。
そういえば僕はたくさん殺した殺人鬼で、ここはあの無法地帯な廃校じゃない。
何人だっけか……五人?もっとか?
とにかく、僕はそれだけ殺したんだから。
彼女と一緒に死ねなかったのは心残りだけど、この際はもういい。
変な言い方だけど、合法的に死ねる方法は……死刑だ。
「警察です。……鈴村さん、少し良いですか?」
そんな風に考えていると、タイミング良くそんなことを言いながら警察手帳を持った男が部屋に入って来た。
……そうだ。
僕の供述次第で、れいちゃんを被害者に出来るかもしれない。
僕自身は死ぬんだしどうだっていい、れいちゃんが顔出しで沢山の人に悪く言われたりする事を考えれば、それはとっても安いもんだったから。
「……は?」
……って、そう思ったのに。
現実は残酷だった。
僕が考えるよりも……ずっとずっと。
「ああああああああぁぁぁっ!!!」
僕はたったひとつ、彼女の残した命の前に、為す術もなく頭を垂れるしか出来なかった。
僕は……死ねないんだ。
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