第2話 哀・令嬢たち!
外は、まだ雨が降っています。
応接室の重い扉が、ノックされ、ゆっくりと開きました。
「カオル嬢、今回は申し訳ありませんでした」
花嫁を迎える父親の正装を着ている男性が、深々と頭を下げます。
「ヒロミの義父です。私が早とちりしたため、この様な、花ムコと、花嫁を間違える事態となりました。申し訳ありませんでした」
長身で筋肉質な、金髪碧眼のイケメンのおじ様が、再度、頭を下げます。
「ヒロミは、着替え次第、参りますので、それまで少しお話をさせて下さい」
「どうぞ、お座り下さい」
扉の近くに立つイケメンおじ様を、まずは座ってもらい、そして、、、問い詰めましょう。
「このローリー伯爵家は、私の兄夫婦が継いで、女の子を一人授かりました」
「しかし、流行りの病で、兄夫婦が他界したため、弟である私が継いで、ヒロミを育ててきました」
「私は独身で、子供がいません。ヒロミだけが、この伯爵家の血筋です」
「伯爵家の存続が領民たちの生活の安定につながるとの思いが、強すぎたのだと反省しています」
「まさかカオル様が女性だとは、、、本当に申し訳ない」
カオルという名前は、女性、男性どちらでも使い、最近人気の演劇に出ている男性の名前もカオルです。
イケメンおじ様から、これだけ謝罪されると、もう責めれません。
「分かりました、今回は実家にも非があると思います」
これは、ちょっと調べれば防げたはずです、父上、、、後でお仕置きです!
「どうでしょう、私は、ヒロミ嬢のお婿さんの、、、姉だとしませんか」
「弟が体調を崩したので、先に様子を見に来たことに致しましょう」
「メイドさんたちには、そう知らせて下さい。それで時間を稼ぎましょう」
相手の答えを聞かずに、サッサと決めてしまいます。
「ありがとうございます」
イケメンおじ様が、頭を下げます。
「私の馬車は、帰ってもらいます。しばらく、お世話になりますので、よろしくお願いします」
私に帰る場所などありません。
「最高の待遇を約束いたします、この屋敷の女王様はカオル嬢だとメイド長に伝えます」
え? 女王様? ソッチ系? 今の混乱してる頭では理解が出来ません。
イケメンおじ様が部屋を出た後、私も普段着へ着替えました。
ヒロミ嬢が普段着に着替え、部屋に入って来ました。目が、泣きはらしたのか、真っ赤です。
「この度は、たいへん申し訳ございませんでした」
ヒロミ嬢が、深々と頭を下げます。
「どうぞ、お座り下さい」
まだ14歳だそうです。
彼女も被害者です。彼女の話を聞き、状況を整理して、気持ちを和らげましょう。
「実は、結婚式の日取りが1か月後に決まっております」
「もう、どうしたら良いのか、分かりません」
すでに、貴族どころか領民たちにも触れ回っているのですね。このままでは伯爵家の体面を保つのは難しいです。
私と同様に、彼女も、背負っている物が重く、そして崖っぷちに立たされています。
イケメンおじ様と話し合った結果を説明します。
「義父の思いは、伯爵家の存続よりも、私の幸せを願ったものです」
「私は、王都の初等部の交換留学生だった時に、同級生だった男爵家ご子息様と恋仲になりました。その方のお名前が、カオル・コ・ワレワン様だったのです」
「ん? 親戚のワレワン男爵家の子息にカオルがいるな」
意外な名前が出てきて、思わず、つぶやきます。
「領地に戻ってからは、手紙を交換し始め、今も続いています」
「その方と同じお名前だったので、義父も私も勘違いいたしました」
「あの男爵家のカオルは、一人息子で独身でしたよね」
ひらめきました。私が本気を出せば、、、いける気がします。
ここは、私が一肌脱ぎます! せめて、彼女だけでも幸せになって欲しいです。
でも、私は、嫁ぐことが、、、できないかも
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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