異世界に転生したんですが、トレジャーハンターになりました。

お寿司丸

第1話 トレジャーハンターと王女様

トレジャーハンター。その名の通り、財宝や秘宝(トレジャー)を探す(ハント)する職業。


冒険者ギルドの中でも稼ぎが少ないので人気がない職業(ジョブ)だ。そんな職業にこの俺、佐久間史郎はついている。


確かに評判通り、実入りは少ない。


例えばこの古びた聖杯を見てもらいたい。錆びだらけでかけているし、メッキもはがれ、さらには変な匂いまでする。


しかし、この聖杯は豊穣の聖杯と呼ばれ、この聖杯を畑がある村の誰かの家においておくだけで、国の穀物が毎年豊作となる力があるのだ。大昔のとある王様が度重なる荒らしで荒廃した国が、再び豊かになるよう神に祈りを捧げて作った代物だ。ちなみにとある王様に見せたら、「ふん、くだらん。」で終わりだった。


こっちは、小さな木彫りの狼の置物。ぱっと見狼だとは思えないくらい迫力がなくて、むしろ可愛いワンちゃんみたい!手のひらサイズだしとっても可愛い!…と侮ってはいけない。


この置物は、古の邪狼(じゃろう)を封印しているのだ。邪狼とは、何千年も前に人類を恐怖に陥れようとした魔王のペットで、それはそれは恐ろしく強く、何人も犠牲になったとか…。そんな邪狼をとある賢者が封印したのがこの置物。


この置物がもし壊れでもしたら、邪狼が再び現れて大変なことになっちゃうかも…なんて。そんな危険なものを山奥にいる伝説の魔法使いに見せに行ったら、「最近はやりの押し売り詐欺じゃな貴様!」と言われて山のふもとまで追い回された。


他にもいろいろあるけど、どれもこれも値段がつかない。ほとんどの人が嘘だろと一蹴してくる。そこらへんの古物商はもちろんだけど、歴史的に価値があるものには興味があるとかほざいてた貴族も、珍しいものには目がないとか言ってた王様も、いかにも賢そうで、いろいろ知ってそうな魔法使いも、どいつもこいつも俺の話を信じない。


まぁ、すべて本に書かれているだけだし、俺自身そのお宝の数々が本物かどうか、検証したこともないから分からない。


そんな儲からない職業にどうしてついたかって?そりゃ、仕方なくだよ。


ある日自転車で坂道を下っていたら、ブレーキが壊れて止まれずに交差点にツッコみ、車にはねられてからトラックにオーバーキルされた俺は異世界に転生し、特にこれと言って能力もゲットできるわけでもなく。


ギルドに行ったらほとんどの職業に最低信用度というものが必要だという事がわかり、人種不明、住所不定の俺は最大で100ある信用度のうち1という最低の評価もらい、信用度1でもなれるトレジャーハンター、旅芸人という二つの中から選ぶしかないといわれ、仕方なくトレジャーハンターを選んだのだ。


旅芸人にすればよかったんじゃないの?と思ったそこのあなた。


旅芸人と言えばあの有名RPGにある職業の一つで、結構悪くなさそう!だと思うだろ。しかしこの世界の旅芸人はみんなが想像するそれとは全く違う。


ギルドの旅芸人の紹介文を見た俺の感想だが、路上ライブをするお笑い芸人となんら変わらない。旅をしてみんなを笑わせよう!めざせ、道化マスター!というキャッチコピーからして、まずこれはない。要はピエロになれってことだ。


というわけでトレジャーハンターにしたわけだが。


いかんせん、金になりそうなお宝はほとんと高レベルのパーティーにもっていかれてしまい、狙えない。そこで、古代の歴史書をでっかい図書館で何冊も読み漁り、そこから誰も知らないようなお宝を探すわけだが、そういうものに限って値段がつかない。


そんなこんなで、月日が経ち、転生してから半年。誰でも自由に使える国立魔道大図書館の常連になった俺は、毎日近くの森で木こりのアルバイトをして、夕方からは図書館で古い歴史書などを読み漁り、バイト休みに遠出して宝探しをするという日課を送っていた。


そんな俺だったが、半年経ったある日遂に絶対に金になるものを発見した。


どんな病気や傷も治す力があるという”漆黒の涙”だ。実はこの漆黒の涙は、とある国の王様が探しているらしく、見つけた者には報酬として金貨1000枚、大体日本円にすると1000万円が支払われるという。


俺はその漆黒の涙を探す事にしたんだが、実は俺は、この漆黒の涙の場所を知っている。


この漆黒の涙を見つければ金貨1000枚という掲示をギルドで見る数週間前、俺はこの漆黒の涙に関する本をすでに読んでいたのだ。


なので、場所も分かるし、さらに仕掛けられた罠もすべて知っている。


というわけで今その漆黒の涙を採りに、竜獄山(りゅうごくさん)にある洞窟にやってきているわけだが…。





竜獄山の洞窟の奥深く、高ランクパーティーでも近寄らない冥府の門という超絶危険エリアの先に俺はいた。


ただでさえ竜獄山は強いモンスターがいるのに、冥府の門にはダイア以上の冒険者でも苦戦するモンスターもいるらしい。だが、俺はそんなモンスターの群れをちょっとしたトリックを使って搔い潜り、今まさに、漆黒の涙があるという冥府の底を目の前にしている。


それなのに…。


今俺はの目の前にいる金髪の女騎士様が突然やってきて、俺が怪しいと思っていた床にあるスイッチを押してしまい、そのせいで、深さ50mの落とし穴に真っ逆さまだ。


落ちる直前にこの女騎士の衝撃吸収魔法かなにかでどうにかなったが、俺は一瞬気絶し、気がつけばお宝は遠くなっていた。


俺は、この間抜け女騎士に言ってやった。


「ふざけんな!あんたのせいでこんな初歩的なトラップにはまっちまっただろ!」


俺が女騎士に文句を言うと、女騎士は怪訝そうな顔で、「わざとじゃないんだから、終わった事を言っても仕方がないだろ。それと、声がでかいからちょっと黙っててくれ。」だ。


というわけで俺は黙れと言われたので大人しく黙りこくって、この落とし穴でかれこれ30分近く座り呆けているわけなんです。


女騎士は落とし穴に落ちてからずっと、壁を高速で駆け上がろうとしたり、ジャンプして風の魔法を地面に放って浮き上がろうとしたり、いろいろやっているが、どれもうまくいっていない。


とにかく俺はこの落ち着きがない女騎士が疲れるまで大人しくしている事にした。


女騎士はほどなくして疲れたのか壁に手を当て、息を荒げはじめた。すると俺の方に歩いてきて、「おい、お前もそんなところで座ってないで、この状況をどうにかする努力をしろ…。」と俺に言ってきた。


俺は黙ってろと言われていたので、意地でもだんまりを決め込むことにした。俺が無視していると、俺の方に近づいてきて、「おい、聞いているのか?」と尋ねてきた。


俺はなんだか気に入らなかったので、無視した。


「おーい、私の声が聞こえないのか?」


女騎士は俺を呼んでくる。


「…。」


俺はまたそれを無視して、ちらっと女騎士の方を薄目を開いて見た。


見たところかなり上等な鎧と剣を身に着けている。きっとどっかの金持ちのボンボンかなにかなのだろう…。どうしてこんなところにやってきたのかは分からないが、この様子だと特に下調べや準備という類のことはしていないのだろう。


俺はだんまりを決め込み、腕を組んで目を閉じ、女騎士の話を完全に無視する姿勢に入った。すると突然魔法スキルの音が聞こえ、俺はまさかと思い目を開いた。


目の前には女騎士が手のひらをこちらに向け、光の玉を俺にむけて発射しようとしていた。


「ちょ…、まっ…!」


「はぁぁっ…!」


女騎士が声を上げると俺めがけて光の玉が飛んできた。光の玉は俺の顔すれすれを通り過ぎ、後ろの壁に激突し、壁が衝撃で破壊される。


「おい!殺す気か!」


「お前が私を無視するから、寝ているのかと思って確認したんだ。」


「だ、だからって魔法打ち込むこたぁねぇだろ!」


女騎士は天然ボケをかましているのか、悪びれる様子もなく、平然としている。


俺はとことん腹が立った。が、しかしあんな上位魔法が使える時点でこの女騎士が圧倒的実力者であり、俺が敵う相手ではない事は明白だ。


腹は立つ。しかし、今こうして争っていても埒が明かない。仕方なく俺はここから脱出する方法を探す事にした。


俺はとりあえず、この落とし穴の底の壁をくまなく見て回る事にした。しかし、特に何も見つからない。


「おい、さっきから壁を見て何をしている。気でも狂ったのか?」


女騎士が俺に小言を言ってくる。それも皮肉ではなく本当に思っているのだろう。悪意が感じられない。だがそれが一々癪に障るぜまったく…。

だがしかし我慢だ。


こんな状況になってしまったが、俺はとにかく本で読んだ知識を思い出してもう一度整理した。


落とし穴があったのは、漆黒の涙があるとされる冥府の底に通じると思われる扉の真ん前だ。そして、落とし穴があった床には、これ絶対に踏んだらヤバイだろうと分かるような、一か所だけ突き出ている丸い岩があった。まぁ、当然誰も引っ掛からない。


当然誰も引っ掛からないとは思うが、この落とし穴に誰の亡骸もないというのは不自然だ。俺が読んだ本によると、今から200年程前に、伝説の探検家ハロルド3世が、この漆黒の涙を探しにやってきて、大勢の死者を出したとあった。それだけでなく、ハロルド3世自身も結局漆黒の涙を見つけることが出来ず、罠に引っ掛かって死んでしまい、仲間は彼の遺体を置き去りにして逃げ去ったらしい。


道中、ハロルド3世の仲間と思われる白骨化遺体をいくつも見たが、ハロルド本人と思われる遺体はなかった。


という事は、ハロルド3世はこの落とし穴で死んでいるか、冥府の底で死んだかのどちらかになるが、本にはこうも書かれていた。ハロルド3世は冥府の底に至る事叶わずと。


つまり、ハロルド3世がこの落とし穴に落ちて、底に至る事叶わず。遺体も置き去りになったという事を俺は最初に考えたんだが…。落ちてみたらハロルド3世の遺体はこの落とし穴にはなかった。


本にはハロルド3世は毒の間を越えて、ともあったから、この落とし穴のトラップがある場所までは少なくとも来ていたはずだ。


本の内容を整理し、俺はある結論に至った。


俺はもしかするとと思い、床を調べる。何か所も何か所も叩く。すると、一か所だけ音が明らかに違い、音が奥に響くところがあった。


「あったぞ!」


俺は思わず声を上げた。


「何か見つけたのか?」


女騎士が俺のところに近づいてくる。

俺は音が違う床のところを叩き始めるが、普通に硬くて壊れない。それどころか腕がいたい。だが俺はそこを頑張って力強くたたく。


「おい、どうして床を叩いてるんだ?この下に何かあるのか?」


女騎士が俺に聞く。


「この冥府の門を作ったのは、今から4000年前の古代文明、スティクラという人々で、そのスティクラに関する伝承に関する本の一文に、”新に勇敢なる者のみが、地底にたどり着く。”ってのがある。俺は最初その文が、冥府の底の事、つまりあの扉の先の事を言ってんのかと思ってたんだ。だけど、今分かった。あの一文はこの落とし穴の事を言ってるんだ。」


「つまりどういう事だ?」


「スティクラって文明は、男児はみんな戦士になる決まりがあったんだ。15歳になった男児は皆ここにきて試練を潜り抜け、最後に神秘の万能薬と呼ばれた漆黒の涙を手に入れ、それを持ち帰る事で戦士になるんだが、おそらく最後の試練の一文、”真に勇敢なる者のみが、地底に辿り着く”の指す地底ってのは冥府の底という場所自体の名称を意味しているんじゃなくて、正真正銘の地底、地の底を指してるんだろう。」


「なるほど…。」


「ま、勇敢なやつは全員勇気を振り絞ってこの穴に落っこちろって言ってるのさ。馬鹿げた話だけど…。」


俺の考えが正しければ、上の扉は罠で、冥府の底でも何でもないただのトラップのはずだ。おそらくハロルド3世はもそこで亡くなっているはず。これなら冥府の底に至る事叶わずという一文の説明もつくはずだ。


しかし、扉の先に遺体を回収できないくらい危険なトラップがあるって事は、ある意味この女騎士があからさまなトラップとも思えるスイッチを押してくれなかったら俺は死んでたかも…。


いや、今はそういう事は考えるな。とりあえず床を叩こう。



俺は直感を頼りに、床をひたすら叩く。


「漆黒の涙はこの下に?」


「いや、この下は深い水溜まりかなにかだろう。文献には水を越えてとも書いてあるからな。ま、この下に降りてからはもうそこまで漆黒の涙も遠くないだろう。」


「そうか…。よし、そこをどいてくれ。」


女騎士は俺に向かってどくように言うと、手のひらを俺が叩いていた地面に向けて、さっきと同じ光の玉を発射する魔法を使った。


女騎士が光の玉を打ち込んだ床が崩れ、床に穴が開いた。


俺は床に開いた穴をのぞき込むが、暗くてよく見えないが水の音がする。俺は唯一覚えているフレアという人差し指に小さな火がでる魔法を使い、近くに落ちていた木の棒に布を巻き、そこに油を塗って火をつけた。


俺の即席松明の火の光が水面が照らされ、わずかに反射している。どうやら下は地底湖のようだ。


よく見ると開いた穴の位置がちょうどこの落とし穴の中心で、スイッチがあった辺りだ。


本来ならこの落とし穴に落ちたやつは地底湖にダイブするのが正解だったってわけか。


床が塞がっていたのは気がかりだが、おおかた滅亡直前にスティクラの連中が魔法でも使って塞いだんだろう。


「そんじゃ、とりあえず降りるか。」


俺は松明が水に触れないようにかばいながら地底湖にダイブし、女騎士も俺に続いて下に降りた。


俺はわずかだが水の流れが向かう先に泳いで進んでいく。数十メートル進んだ先に、水辺から上がれそうな岩場があり、俺と女騎士は地底湖から上がる。


岩場を上がった先には、さらに深く下へ続く道があり、石の階段が続いていた。


俺と女騎士は下へ進んでいく。するとすぐに7畳くらいの空間にたどり着き、そこにはドラゴンの顔をした石像があり、そのドラゴンの口から黒い液体がポタポタと垂れていた。


「これが漆黒の涙…。」


俺が関心していると、女騎士がすぐにポーチから小瓶を取り出し、その液体をその中に注ぎ始める。そしてその液体を入れ終えると、俺に、「よし、私はもういいぞ。」と言って、帰る気満々の顔で俺を見てきた。


この女は馬鹿なのか、それとも天然なのか、それとも、天然と馬鹿は同じなのか…。俺がそんな風にこの女騎士を呆れながら見ていると、妙に身に覚えのある匂いが鼻を刺激してきた。


なんか、ガソリンスタンドで嗅いだことがあるような…。これってもしかして…。


俺はまさかと思い、ドラゴンの口から垂れる黒い液体を手に少し注ぎ、匂いを嗅いだ。そして、自分の服(ウール製)を少しやぶり、黒い液体をしみこませてそこにフレイで火をつけた。すると、みるみるうちに燃え始めた。


ガソリン…石油が湧いてるのか…。


「あの、ちょっといいか。」


「なんだ?」


俺はこれが石油であり、飲んだらヤバイ事になると伝えた。


「なんだと?ではこの黒い液体に病を治す力などないというのか?」


「多分ない…。」


俺がそう言うと女騎士は膝から崩れ落ちた。


「そんな…。」


「お、おい…、そんなに落ち込むなよ…。


「私はこの万能薬を父上に持っていかなければならないのだ…。それなのに、私は…。」


「お前の親父さん、病気かなにかか?」


「ああ、重い病でな…。もうあと半年生きれるか分からないそうだ…。」


女騎士の声は重く暗いものだった。父のためにこいつを探しに来てたのか…。そうだとしたら尚更、がこいつは持っていけないな。ガソリンなんて飲ませたら半年の余命がさらに縮まるだろうし


「あーあ…、これで1000金貨もなしだなぁ…。せっかく王様に金貰って俺のマイコレクションを飾る倉庫を作りたかったのに…。」


「なんだ、お前は私の父上の為に漆黒の涙を探しにきていたのか…。」


「私の父上?いやいや、俺はカンブリア王国の王様に渡すつもりだけど。」


「カンブリア王国国王エゼルレッド2世は私の父だ。」


「え?じゃあおたくは?」


「私はカンブリア王の娘、アリスだ。」


俺はそれを聞いて一瞬放心状態になった。


王女?カンブリア王国の?


カンブリア王国。俺が転生された国。そして俺は半年たった今も、この国のとある街を拠点にしてトレジャーハンターをやっている。


「まじかよ、王族かよ…。俺、スゲーやつに出会っちまったみたいだな…。」


「いうほど大したものではない…。」


アリス王女はちょっとテンションが低くなっている。国王に漆黒の涙を持って帰れなかったのが凄いショックだったんだろう。


「とにかく、もうここにいてもしょうがないし、出ようぜ。」


「ああ…。」


俺は失意のアリス王女と共に降りてきた階段を登って行った。



言い伝えでは、漆黒の涙は、”すべての戦士を傷や病の痛みから解放し、平穏をもたらす”らしい。


一見するとどんな傷や病でも治してくれるんだよみたいな感じで書いてあるが、これが石油となれば話は変わってくる。


俺が日本にいた頃、ニュースでオイルタンカーの座礁事故で、大量の石油が海に流れ出たみたいなニュースがやっていた時に、眼鏡をかけたどっかの大学の教授かなにかが、人間が仮に飲んだら感覚が麻痺して痛みを感じなくなって、体重x0,5ミリリットルも飲んだら危険とかなんとか言っていたのを覚えている。


スティクラ文明の戦士たちはこの石油を呑んで、感覚が麻痺して痛みから解放され、死という平穏を与えられていたのだろう。


階段を登ってさっきの地底湖のところまで戻ってくると、アリス王女はそこら辺に瓶に入れた石油を流し始めた。


「まぁ、元気だせよ。トレジャーハントってのはこんなもんなのさ。行ってみたら話と違うってのはよくある事で、そんなことで一喜一憂してたらキリがない。それに、お父上様だってお前のその気持ちだけでもきっと喜んでくれると思うぜ?」


「…。」


アリス王女は無言だ。魔法で起きているか確認してやろうか。


まぁそんなことはしないけど。


「とりあえず出口に向かおうぜ。こんなところにずっといたんじゃ息が詰まるしな。」


「出口って…、もしかして来た道を戻るつもりか?」


「いや、流石にスティクラの戦士の試練もそこまで新人戦士に意地悪な事はしないって。」


俺は漆黒の涙があった部屋に続く階段のさらに奥にある穴を指さした。穴は木や石で支えられていたので、間違いなく人工的に作られたものだった。


「多分あそこが出口だ。」


俺はそう言って穴へ向かう。穴に入ると中に螺旋状の石の階段が上に続いていて、僅かだが風が上から吹いていた。


「ここが出口に繋がっているのか?」


「ああ、きっとそうだ。」

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