56.ハイエナ
※ビッグボーナスがどうのハイエナがどうの言っていますが気にしないでください※
宴会は静まり返っていた。誰も展開についていけていない。2人を除いて。
「りょうちゃん!」
「桜さん!」
2人は抱きしめ合い、熱い口付けを交わす。
言っておこう!誰も展開についていないのだ!
さっきまでとっても熱くなっていた皆はスッと冷めてしまっている。星雲だってそうだ。むしろなんか真面目な話をしていたのにぶち壊されて若干イライラしてきているくらいだ。ノアを見れば真面目に今後のことを頼んだのにぶち壊しやがって・・・と顔に極太インクで書いてある。怒りすぎて声が出ないだけだ。
そんなことはお構いなしにどんどん話は進んでいく。
「じ、実は指輪も用意してあるんだ・・・」
指輪も用意していたらしい。
「嬉しい!あれ?でも石座が空っぽですね・・・?」
石座(宝石の入る所)が空っぽらしい。まさか!?と星雲は自身の発言を思い出した。
「フフッ、コレはね。星雲さんとノアさんからのサプライズだよ。実は桜さんには最高の宝石をつけて欲しいって言ってくれてね?ダンジョンから産出された一番の宝石を桜さんにあげたいと・・・ね?星雲さん?」
確かに言った。何故知っているとトシを睨みつけたらトシはすぐ目を逸らしやがった。
どうやらゲロっているらしい。
そして、残念なことに今回深淵部の宝物庫はまだオークションにかけていない。まさか、狙っていたのか?
(ネレイド、虚実の空間内にある一番の宝石は?)
(先日の『円卓』で見つけたピンクダイヤの原石をアントワープに出して磨いたものがつい昨日帰ってきた所です)
やはりコイツら狙っていやがったな!?
(・・・ちなみにグレードは?)
(40ctの
それはサクヤにプレゼントしようと思ってノアに頼み込んで譲ってもらったものだ。
ちなみにピンクダイヤは有名な鉱山が閉山してからダンジョンでしか産出されない超希少な宝石となっている。
(ちなみに桜さんには見せていませんよね?)
(・・・申し訳ございません。受け取りの際に自慢してしまいました)
桜とマカベを見るとニタァと笑っている。
濃厚演出では無い、確定演出だ。コイツらマジでやりやがった!このクソハイエナ共め!
この断れない状況でぶちかましてきやがった!
「そ、それはめでたい!ここにいる全員が証人だ!」
鏡が空気を変えようとそんなことを言うが違うのだ!星雲にとってはハイエナ共に撒き餌をしているようにしか見えない!
「そ、そうだな!なぁ!?」
「「「う、うん!」」」
この時点で星雲に断れる要素が完璧に排除された!ビッグボーナスを引いてタバコから帰ってくると他人が勝手に座っているような気分だ!
「本当ですかぁ!?こんなに嬉しいことはありません!!」
それはそうだろうな!ハイエナ共にとってはまさに絶好の機会だ!むしろ狙うならココしかなかった!
「どんな宝石が嵌められるか楽しみだね!桜さん!」
マカベの野郎!お前は絶対に知っているだろうが!まさかサクヤの後輩にこんなクソがいるなぞ・・・いや、桜の選んだ相手だ。まともな人間な訳がないと思っていたが、ここにきて本性を現しやがったのか!!
「そうですね!きっと
ピンクダイヤだからな!さぞかし桜の名前にぴったりだろうさ!知っているくせに白々しい!・・・いや、待て。ワンチャン騙せるのではないか?ネレイドも全部の宝石を自慢した訳ではあるまい。
星雲はブラフを一発かましてやることにした。
「そうですね!めでたいことだ!では、『円卓』の深淵部で見つけた一番はこのダイヤでしたかね?ねぇ?ノア?」
星雲はあくまでも自然にノアに話を振る。しかし、目は全力で合わせろ!と訴えかけている。そしてノアはその意図を的確に汲み取った。
「そうだな!このダイヤが一番
そう、今取り出したダイヤは一番大きなモノだがカラットだけでその他の4C《ダイヤのグレード)はそれほど高くは無い代物だ!ざまぁみろ!
「・・・私如きにこんな大きなダイヤは似合いません!もう少し小ぶりな!桜色の小ぶりなダイヤで結構です。私は毎日、ネビュラファクトリーという素敵な場所で働けるだけで幸せなのですから!」
なのですから!じゃねぇよ!このクソウジ虫が!指定してきやがった!ピンクダイヤを指定しやがったな!
桜の顧客や一部、意図を汲み取れないアホは「なんて控え目な子なんだ・・・」などとほざく輩すらいるではないか!貴様らエクスプローラなら言っている意味を理解しろボケカスめ!数百万ドルから数千万ドルにフルモデルチェンジを要求しているのだ!
星雲は笑顔で首を振りながら言う。
「本当に桜さんは素敵な人だ。マカベさん、絶対に幸せにしてくださいね?」
あくまでも桜の要求に応える理想的な上司をイメージして振る舞う。
「そうだな。サクラよ、幸せになるのだぞ?」
ノアもあくまで良き師匠として振る舞うことにしたようだ。
むしろ、2人にはコレしか選択肢は残されていない。
星雲がピンクダイヤを石座に置き、ノアが爪を締めて指輪を完成させる。石座にすっぽりとピンクダイヤが収まった瞬間、星雲とノアは血管がはち切れそうになった。
そんなこととは関係なく、盛大な歓声と拍手が起こる。
「なんて素敵な仲間たちなんだ・・・」などとこのクソ茶番をみてほざいている奴らの義肢と武器にはダンジョンに入ったら爆発する時限式のナニカを詰め込んでやろうと星雲とノアは決めた。確か封印指定している魔道具に近しいブツがあった筈だ。
「大将!祝い酒だ!」
「アイヨォ!」
「「「カンパーイ!!」」」
(ネレイド・・・)
(何でしょうか?)
(冥府への訪問予定を早めてもらえますか?今すぐに呪いを込めなければならない人間が2人います。あと封印指定した時限式の魔道具、アレをあるだけ私とノアの共同机に出しておいて下さい)
(承知しました。この茶番が終わり次第向かいます)
「今日はめでたい!めでたい!」
アイサッドがはしゃいでいるのを見てとりあえず呪いの対象が1人増えた。お前は価値に気づけ!ポンコツ支部長が!チカは気づいて気の毒そうにしているというのに!
星雲とノアは心を押し殺し笑顔を貼り付けて宴会を続ける。
「賭けは僕の勝ちでいいかな?」
トシは2人に追い打ちをかけにくる。
「貴様ぁ、賭けの内容をゲロったな!?」
ノアが声を押し殺しながらトシに圧をかける。
「ノアさんや、僕は宝石のことをマカベさんに話しただけだよ?」
「レギュレーション違反だ!」
「そうだそうだ!」
「まぁ、ここまであからさまに狙ってくるとは思わなかったけどね・・・」
「「クソがぁ!でもおめでとうございます!!」」
なんだかんだでノアと星雲は桜たちを祝福したのだった。
私は差枚数管理型のAT機が好きです。
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