第17話 燃え燃えキュン!なタッグ技!

4羽の“鳥らしきもの”が、神殿廃墟の柱に止まり、こちらを見下ろしていた。

頭から胸元までは人間の女のようで、体は鳥である。


「いやぁぁぁぁぁ!!」

チャラガが叫んだ。

「おっぱいまるだし!!!」


「そこ?!!」


見るからに不気味な風体ふうていの鳥の化け物たちが一斉に口を開いた。


チャラガが僕に警告した。

「耳をふさいで!アレはハルピュイア!!声を聴いてはダメ!!」


しかし…間に合わなかった!!


『『『『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~♪♪♪』』』』


—————なんという美しい声の重層ハーモニー!!

思わず聴き惚れてしまいそうだ。


チャラガは自分の耳を押さえるので精いっぱいで、僕が耳をふさぎ遅れたことにショックを受けていたようだった。

そう、このハルピュイアは、その美しい声で人を誘惑し、喰い殺す残虐な魔物なのだ。


しかし、僕にその美声は通用しなかった。


『誘惑できないッ…!?』

ハルピュイアの一羽が動揺している。


僕は呆れて答えた。

「うーん…その見た目で美声出されてもなんか………………入っていけないっていうか………例えるとお婆ちゃんの全裸くらいありがたくないよ」


『キャロロロロロロロロロオォォッ!!!』


ハルピュイア達が一羽ずつ急降下してきた!


僕はチャラガの手を引っ張り、丘を駆け下り始めた。


なんということだろう。

上下の顎をこれでもかと開き、いつか見た深海魚ミツクリザメみたいな顔になって一羽目のハルピュイアが襲ってきた。


「めっちゃ怒ってんじゃん!!!何したの?!」


「うーん…事実を言ったまでさ」

僕は即興で韻を編み始めた。


〽「お前等 

そのデカいクチ 

まで


一羽目を疾風で吹っ飛ばした。

今の言霊ラップで口が縫合ほうごうされたらしく、苦しそうにもがいている。


「す、すごい!」


チャラガが感心している。ちょっと嬉しい。

「ざっとこんなもんだ!まだくるぞ!」


「アタシも少し、魔法使えるんだ!やあっ!火球ヴォリーダ!」


チャラガの火の魔法は、球のように二羽目に直撃した。


『キュロォッ!』


しかし、二羽目のハルピュイアは火の球を振り切って、また口を裂いてこちらに向かってきた。


「やー!効いてないよ!」

チャラガが慌てる。


「チャラガ!もう一回だ!」

僕に妙案が浮かんだ。


チャラガが頷き、もう一度魔法を放つ。

火球ヴォリーダ!」


火球こいつを言霊で増強できないか?!


〽「ここ僕の (どくせんじょう)

聖地を業火で 

鳥が呟いたところで 

天まで飛ばそう 


チャラガの小さな火球が火炎放射器のソレのように増強した。


『バッキャアァアアァアアァアァアアアアァアアァ!!!!!』


断末魔とともにハルピュイアは、上空に向かって燃え盛る炎に呑まれ、のた打ち回る。


三羽目、四羽目のハルピュイアは惨敗した仲間を目の当たりにし、恐れをなしてUターンしていった。


一羽目のハルピュイアも窒息死していた。


僕とチャラガはへたり込んだ。

「や、やった…」


やがて、炎が徐々におさまってきたハルピュイアを見つめてチャラガが口を開いた。


「ほっとしたらお腹すいちゃった…あの燃えてるヤツ、下半身は鳥だから食べれるかな」


「無理だろ」

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