はじめはほのぼのパートが続いていたので、のんびりアレクたちの動向を見守っていましたが、途中、魔物や魔族と呼ばれる敵対勢力が現れた辺りから、雰囲気が一変。
薄氷を踏むような戦闘シーンが手に汗を握らせ、物語が佳境に差し掛かるにつれて、ドキドキハラハラが止まらなくなり最終話まで一気に読み進めていました。
世界観の作り込みや情景、モーションの描写がとにかく丁寧で、さりとて必要以上に飾り立てられていない文章はテンポの良いストーリー展開とも相まって適度に頭に染み入りやすく、有意義な読書時間を過ごすことができたと実感しています。
何より特筆すべきは、登場人物たちがみな個性的で魅力に溢れていること。
物語の中心人物であるアレク、スピネル、ルチルの三名はとりわけ冒険者としての才に恵まれているわけでもなし、要領よく問題に対処する術を持ち合わせていたりもしません。しかし、三人とも人柄に毒気がなく、心向きは素直で、何事にも前向きです。今の自分たちにできることを全力でやり遂げようとするその健気な姿勢は好感が持てて、つい応援したくなります。
冒険の道中に出会う協力者たちや敵対する魔族の面々も、一人ひとりに独特の個性や人生観が窺えて愛着が湧きます。
エンタメ小説としてかなり完成度の高い作品と太鼓判を押せます。
続編希望です!