第15話 リーベラとの再会


「た、確かにこの圧倒的なオーラ……只物ではない!」


「ま、待て! 我らに敵意はない! 今の状況で魔族同士で潰しあうなど愚の骨頂だ!」


 おっ、どうやら戦闘は避けられそうな雰囲気かもしれない。


「今使いの者を伝令に走らせる。だからそれ以上はこの門に近付くな。その場合は我らの全力をもって汝らを排除する!」


「……構わん、できるだけ早くしろ」


 う~ん強者の雰囲気ってなかなか難しいな……オッサンは基本的にはいつも弱者だったから、魔王の気持ちや話し方なんていまいちわからんぞ。




「魔王様! 戻ってきてくれたのですね!」


 しばらく魔王城の前で待っていると、空からリーベラが飛んできた。やはり彼女は空を飛べるようだ。


 彼女の周りにはリーベラと同じような格好をした魔族達が彼女を囲っている。四天王のひとりみたいだし、親衛隊みたいなものだろうか。少なくとも魔王召喚の時にいた他の四天王はいないようだ。


 リーベラも親衛隊も全員が女性でビキニっぽい露出の激しい服を着ているんだよな……オッサンにとって刺激が強いから勘弁してほしい。


「リ、リーベラ様、本当にこのお方は魔王様なのですか!?」


「うむ! このあと正式に通達があると思うが、実は先日魔王召喚の儀が行われたのだ!」


 なるほど。魔王召喚できたはいいが、召喚できたのは俺のような人族の上に、むしろ人族のほうに付きそうだったから、隠していたんだな。それを俺が魔族の子供達を連れてきて、魔族に付くと勘違いをしているのだろう。


「おお! さようでございますか!」


「素晴らしい! 新しい魔王様が現れたのなら、人族との戦争に勝てますな!」


 いや、そんなことを期待されても困るんだが……


「魔王様、先ほどは大変失礼いたしました!」


「先ほどの御無礼、どうかお許しを!」


 2人のケンタウロスが槍を置き、片膝をついて俺に跪いた。


「問題ない。貴様らは門番という職務をまっとうしただけだ。むしろその忠義、褒めて遣わす」


「「ははあ!」」


 ……適当に魔王の感じで喋ってみただけだから、そこまで畏まらないでいいんだけどな。


「……おい、リーベラ。2人で話がある。こちらに来い」


「はっ! この身はすべて魔王様のものです! どのような命令にも従います! この身体、いかようにもお使いくださいませ!」


「………………」


 その言い方は勘違いされてしまいそうだからやめてほしい……


 ほら! 親衛隊の人達が、向こうで俺のことをジト目で見てんじゃん!


 


 リーベラと一緒に他のみんなとかなりの距離を取った。ちゃんとリーベラには何もしていないことを証明するために、ちゃんとみんなの目の届く範囲にはいる。


 ……オッサンは満員電車で痴漢と間違えられて、冤罪をかけられないように必死なのである。


「どうして俺が召喚された魔王だとわかった?」


 今の俺は魔王黒焉鎧によって全身が禍々しい黒い鎧に覆われている。この鎧を着ていない状態だと普通に見えないこのオッサンと同一人物であるとなぜ分かったのだ?


「はっ! 私は気配察知スキルを持っております。先日初めてお会いした際に魔王様の気配を一度確認しておりましたゆえ、その気配が魔王様と一致しておりました。それに今自らを魔王と称し、この城まで訪れるのはあなた様しかおりません」


 なるほど……気配察知スキルでそんなこともできるのだな。俺も気配察知スキルはあるし、あとで確認してみるとしよう。


「魔王様、先日は大変失礼いたしました。あれだけの無礼を働いたのに、戻っていただけて私は本当に嬉しいです!」


「いや、別に戻ってきたわけじゃない。とりあえずいくつか確認したいことがある」


「そ、そうなのですね……」


「……話を聞いてみて、もしも力になれそうなら多少は協力してやる」


「本当ですか!」


 パアッとリーベラの表情が明るくなる。深紅の瞳に燃え上がるような真っ赤な髪、整った容姿にその大きな胸が強調されるような露出の激しい服。オッサンの目のやり場に困るな。


 魔族に協力して人族を殺すなんてことを手伝う気はまったくないが、それ以外に協力できそうなことがことがあれば手を貸すのもやぶさかではない。


「それとあの子供達に水浴びでもさせてやって、何か代わりの服を着せてやってくれないか?」


 子供達の今の格好はボロボロの布切れをかぶっているような状態だ。しばらく水浴びなんかもできてない状況だろう。


「魔王様、あの子供達は?」


「人族の街で捕らえられていた魔族の子供達を、たまたま見つけたから保護してきた。面倒はこちらで見るが、少し手を貸してくれると助かる」


「人族に捕らえられていた魔族の子供達ですか! 本当にありがとうございます! やはり魔王様は魔族にお優しいのですね!」


「今回はあの子供達に非がなかったから助けただけだ。まだ魔族の味方をすると決めたわけじゃない」


「だとしてもです! それに子供達だけでなく我々に対してもです。あれほどの非礼を行った我々に対して、魔王様は人族であり、圧倒的な力で容易く我々全員を殺すことができるのにそれをしませんでした」


「………………」


 それは別に優しさからではない。あそこで暴れても自分の力を理解していない俺が他の魔族全員を相手にできるか分からないから逃げただけだ。


 四天王の2人を倒したと言っても、相手が完全に油断していただけだからな。まあ勝手に俺をいいほうに勘違いしているならそれでもいいか。


 そういえば、俺が黒炎を撃った四天王の青い肌の男はどうやら生きていたらしい。


「とりあえずあの子供達や他の魔族のやつらには俺が人族であることは秘密にしておいてくれ」

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