バグだらけの世界を修復して救世主になるには

多那可ぱとす

第1話

「明日はいよいよ県大会だね。私は応援しかできないけど……誰よりも大きな声で応援するから、がんばってね皐月ちゃん!」

「加奈が応援してくれるなら百人力だよ。私、必ず勝ってみせる」

 そう言って私たちは二人で神社の境内で手を合わせる。

 わたし、不夜鳥皐月は明日フェンシング部の県大会を控える中学二年生。

 女子力は低いけど、負けん気だけは人一倍の部活女子。高く一本に結んだポニーテールがトレードマークだ。

 となりでお祈りしてくれているのは幼なじみの辰己加奈。

 加奈は運動が苦手だけど、フェンシング部のマネージャーとしてわたしを支えてくれる大親友。

 加奈のためにも、きっと明日の試合は勝ってみせる!そう心に誓ったそのとき、神社の空の上に暗雲がたちこめて大地がかすかに揺れ動いた。

「じっ地震、かな?」

 加奈が不安げに首を傾げるが、さつきは暗い空の向こうに見える大きな影に目がくぎづけになっていた。

「何なの……アレ」

 さつきが見開いた目の先には、雲を割り空から迫る大きな指先のようなものが眼前いっぱいに広がっていた。

「さつきちゃん!」

 その指はあきらかにさつきに狙いをさだめて迫ってくる。

「加奈っ、にげて!」

 さつきを心配して手をのばす加奈にそう叫ぶ。

 そうこうしている内に巨大な指先はさつきの襟首をつまみあげ、体を宙にうかせていた。

「さつきちゃーーん!!」

「かなーーっ」

 地上に残された加奈の顔がどんどん小さくなり、さつきは空へと吸い込まれていく。

 雲の上までひきあげられると辺りは真っ白になり、さつきの意識もそこで途切れたのだった。

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