第86話 ライザの決意
「ヤクモっ!」
メルトが僕に駆け寄った。
「まさか、プラントドラゴンを倒せる技を持っていたとは。とんでもない男だな」
「いえ、キナコがプラントドラゴンの動きを止めてくれたからです」
僕は首を横に振った。
「僕一人だったら、触手に邪魔されて、首を狙うチャンスがなかったです」
「たしかにキナコもよくやってくれた」
「テトには逃げられてしまったがな」
キナコが白い爪で頭をかいた。
「奴を捕らえれば、出口がわかったかもしれない」
「そうだな。すぐに追いかけよう」
その時、団員たちの怒声が聞こえた。団員たちが怒りの表情でライザを取り囲んでいる。
「お前もドールズ教の信者だな?」
団員の一人がロングソードをライザに向けた。
「裁判の必要はない。ここで殺してやる!」
「ち、違う!」
ライザは蒼白の顔で否定した。
「テトとはパーティーを組んでたけど、私は狂信者じゃないから」
「そんなこと信用できん」
体格のいい団員がライザに歩み寄る。
「仲間の仇を取らせてもらうぞ」
「待て!」
キナコが口を開いた。
「ライザは信者ではないだろう」
「どうして、それがわかるんだ?」
団員がキナコをにらみつける。
「こいつは普通にアーマーゴーレムに襲われていたからだ。それにライザはアーマーゴーレムを倒していた。信者ならそんなことはしないだろう」
「それは……」
団員がもごもごと口を動かす。
「僕もライザは信者じゃないと思います」
僕はライザの前に立った。
「テトが信者とばれた時も、ライザは驚いた顔をして立っていただけで、何も動きがありませんでした。もし、信者なら、テトといっしょに逃げているはずです」
「たしかにそうだな」
メルトがうなずいた。
「今もここにいるのが信者ではない証拠でもある……か」
「それよりも、今はテトを追うべきだろう」
キナコが言った。
「あいつを追えば、出口がわかるかもしれない」
「ああ。全員でテトを追うぞ!」
メルトはテトが逃げた穴を指さした。
水滴が落ちる通路を進んでいると、ライザが僕の肩を叩いた。
「ありがとう、ヤクモ。私をかばってくれて」
「いや。君が信者とは思えなかったから」
「……どうして、そう思ったの?」
「出会った時、君はすごく僕を警戒してた。でも、いっしょに行動してるうちにすぐに警戒を解いたよね」
「それは、あなたが悪い人に思えなかったから」
「でも、テトは違ってたよ」
僕は歩きながら、髪の毛に落ちた水滴を払う。
「僕への警戒を解かなかったし、森を歩く時も、ベテランの冒険者みたいにすごく用心深かった。それなのに、テトは失敗が多いって君が言ってたから。もしかして、わざと失敗をしてたんじゃないかって」
「そう……だったんだ」
ライザの声が沈んだ。
「私はわからなかった。テトとパーティーを組んで、何十日も経っていたのに」
「きっと、君と組むことで、信者とバレないように炎龍の団に近づきたかったのかもしれない。君はDランクでそれなりの信用もあっただろうし」
「……そうだと思う。ガホンの森での依頼ばかり受けてたのもテトの希望だったし」
「本当はラックスさんの死体を見つける役目をライザにまかせるつもりだったのかも」
「……そっか」
ライザの体が小刻みに震えた。
「ヤクモ……テトは私が捕まえるから」
「気をつけたほうがいいよ。テトは実力を隠してると思う」
僕は唇を強く結ぶ。
テトはプラントドラゴンを召喚できる水晶玉を持っていた。あれはダグルードがダークドラゴンを召喚した時と同じ物だった。きっと、魔族と関わりもあるはずだ。
◇ ◇ ◇
お知らせ
「雑魚スキル」と追放された紙使い、真の力が覚醒し世界最強に ~世界で僕だけユニークスキルを2つ持ってたので真の仲間と成り上がる~のコミカライズが、双葉社の「マンガがうがう」のアプリで公開されています。
現在、スマホやパソコンで見れるようになっています。
この物語を漫画で読みたい方は、ぜひ、読んでみてください。
アルミーネやピルンのかわいい絵を見ることができます。
そして、もふもふ猫人族のキナコの姿も。
原作小説も、現在2巻まで発売中! 書き下ろし小説もあるのでよろしくです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます