第64話 炎龍の団
その後、僕たちは森の中で一夜を過ごし、翌日、タンサの町に戻ることができた。
冒険者ギルドで報酬を受け取った後、ガホンの森で死んだ冒険者のプレートを職員に渡した。
ドールズ教の信者が冒険者を殺した可能性があることを伝えると、職員の表情が変わった。
深刻な顔をして、周囲にいる他の職員たちと話を始める。
「また、ドールズ教か。これで三人目だな」
「ああ。全員が『炎龍の団』の団員ばかりだ」
「それって、やっぱり……」
数分後、隣にある待合室の扉が開く音がした。
振り返ると、扉の前にオレンジ色の髪の亜人の女性が立っていた。
女性は二十代半ばぐらいで、背丈は百七十センチを超えていた。頭部に猫の耳を生やしていて、肌は褐色だった。服は光沢のある黒い服を着ていて、金色の首輪と腕輪をしている。
ベルトにはめ込まれた金色のプレートを見て、僕は彼女がSランクの冒険者だと気づく。
女性はつかつかと受付に歩み寄り、テーブルを平手で叩いた。
「おいっ! うちの団のラックスの死体が見つかったって本当か?」
「は、はい。メルトさん」
職員の男が女性――メルトに青いプレートを渡した。
「登録された番号と合っていましたから、間違いないかと」
「……っ!」
メルトは牙のような八重歯をぎりぎりと鳴らした。
「あれほど注意しろと言ったのに」
メルトの体が小刻みに震え出し、オレンジ色のしっぽの毛が逆立った。
「……で、誰がラックスを見つけたんだ?」
「あの人です」
職員の男が僕たちを指さした。
メルトは僕たちに近づき、頭を下げた。
「感謝する。君のおかげでラックスの死に場所を知ることができた」
「偶然見つけただけですから」
僕はメルトと視線を合わせる。
「僕はヤクモ。Eランクの冒険者です」
「私はメルト。炎龍の団のリーダーだ」
「炎龍の団って、セガサ山にあるドールズ教の隠れ村を壊滅させた……」
「知ってるんだな」
「もちろんです。団員の数も多くて強いと評判ですから」
「どんな荒事にも対応できるように私が団員を鍛えてるからな」
メルトは右手をこぶしの形に変える。みしりと骨の鳴る音がした。
「ヤクモ。ラックスの死んだ場所の地図を書いてもらえないか。団の仲間で埋葬してやりたいからな。もちろん、金は払う」
「いえ、お金はいりません」
「いいのか?」
「はい。こういうことでお金を受け取りたくないから」
「……そうか」
メルトはダークグリーンの瞳で僕を見つめる。
「ヤクモ、君の名前は覚えておく。ありがとう」
メルトはもう一度、僕に頭を下げた。
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