第6話
「やっぱ3日も学校来ないと体がなまっちまうな」
「上田お前マジメに謹慎してたの?」
「んな訳」「「ねえよな」」
ヒロトと俺の声が揃う。
俺、瀬野達哉。1週間ほど前に部室で吸ってたタバコがバレて3日間の停学処分を終えたところだった。一緒に停学になったのは俺入れて16人だが、特にこの上田とヒロトは俺の小学校からのツレでいつも一緒に遊んでいた。
「あっれ~!? からあげ君入ってねえじゃん!」
「どうした?」
俺はさっき学校近くのコンビニで買ってきた袋を覗き込んでソレが入ってないことに気が付いた。
「バカだなぁ、なんでその場で確認しなかったんだよレシートは?」
上田に言われて思い返したけどレシートはその場でレジの小箱に捨てて来た。
「授業サボって買い食いしてる罰だよ」
ヒロトが言うけどそれはお前らもだろうが。
「ちょっと電話してみるわ」
スマホのマップアプリから店の電話番号を調べてすぐに電話してみた。
「はい!もしもし○○○○高松店です」
電話の声とさっきレジを担当していた年配の女性の店員の声とが耳の奥、脳の近くで一致した。
「さっき買い物したんだけど買った筈のからあげ君が入って無かったんですよね」
「ああ! さっきの高校生のお客さん? すみません 私ねお客さん帰ってから気が付いたんだけど遅くてね、どうしようかと思ったんだけど良かったわ」
良くねえし……
「今から取りに来てもらえるかしら?」
はぁ、めんどくせぇなぁ……
「うん、じゃ今から行きますから」
それだけ言って電話を切った。
「なんだよなあ、そっちが忘れたんだから持って来いよなぁ」
「まあまあ瀬野君、そんな事言いながらちゃんと取りに行くんだから」
「そりゃもったいないし当たり前だろ」
しかしもうちょっと申し訳なさそうにしてもいいだろうになんか軽く謝る程度でさ、こりゃちょっと直接ガツンと文句の一つも言ってやろうと俺は店に戻る道のりで自分のボルテージを上げて行った。
そして頭の中では何度も何度も復唱した。
「さっき からあげ君の件で電話した者だけど!」
「さっき からあげ君の件で電話した者だけど!」
第一声で威圧してやるんだ。
「さっきからあげ君の件で電話した者だけど!」
よし大丈夫だ!
この勢いを失ってはいけない。いつもより強めにコンビニのドアを開けると空いていた入口側のレジに居る店員に声を掛けた。
「さっき電話したからあげ君だけど!」
「…… 」
やってしまった。マズイ……
「ああ、はい!電話のからあげ君ね」
後ろで上田とヒロトが爆笑している。俺きっと明日からあだ名からあげ君だ。
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