転生したらホムンクルスの体に錬成されたと悲劇の助手と孤独な角付き魔人探偵の魔界探索共同事件簿

杉林重工

1.おいしいフライにしてあいつは彼を食べたのです

 店主兼シェフ、ガルメラ・ラーバン。爬虫人。

「今日はとにかく仕事が立て込んでまして。ずっと料理に集中していたんです。ですが、それが、まさかこんなことになっているとは。ほんと、少し目を離しただけなんです。ずっと一人だったのでアリバイはないですが。調理場に戻ったらこんなことに……なっていて。そんな、わたしが犯人なわけがありません。だって、犯人は確実にあいつですよ。だって、調理場にいてバリバリと……」


 経理担当、レボン・ラーバン。爬虫人。

「わたし達夫婦は子供に恵まれませんでしたので、それこそ本当の息子のように思っていました。それが、あんな、残酷な方法で殺されてしまうだなんて。はい? わたしはズィー様と一緒におしゃべりをしていましたよね。そんなことよりも、早くあれを処分してください! わたし達の大切なシロムーにあんなことをした、あいつをです!」


 レセプショニスト兼フロアスタッフ、ウォング・サンプ。猫獣人。

「あなたに言うのもなんですが、やっぱりあれはおかしかったんですよ。自動人形にしては良く動くし。生き物みたいだったじゃないか。早く処分してくれ。庇うのもいい加減にしたらどうですか。僕? 僕はずっと客の機嫌を取っていたさ。君の人形とは違って職務に忠実なんだ、僕は」


 建設会社ルド=バルコ社長、ジジーガ・マーグン。獅子獣人。

「うちの大仕事がやっと終わったねぎらいに、部下たちを連れてきたんだ。この店はおれが設計したし、整備もやってるんだ。シロムーだっけ。半魚人の子供が働いているのはよく見たよ。今日は見てないがな。おれを疑うのもいいが、みんなと食事していたからな。確かにトイレに行ったやつはいるだろうが、半魚人を捌いてフライにする時間はないだろう。それに犯人はわかってるって聞いたぞ。今の魔界じゃそんなことないと思っていたけど、まさか魔人を食うなんてなあ……」


 建設会社ルド=バルコ専務、ニュード・ナーバリ。熊獣人。

「この店はよく使っています。従業員も皆、ここに来るのが楽しみで。いつも予約させていただいています。事件の時、給仕以外は、ウォングはわたし達のテーブルで雑談を。料理もいいですが、彼とのお喋りもまた楽しい。彼はああ見えて博識でね。会うたび違う話ができるのは本当にすごい。料理を持ってくるたび毎回違う雑学を添えてくれるんだ。でも、犯人は決まってるんだっけ。恐ろしいことをする」


 六人目~十人目、省略。


 私立探偵ズィー・ズーム・ゾーンの助手、ジョシュ。ホムンクルス。

「僕は犯人じゃない! 僕たちは友達だ! 確かにシロムーとは今日出会ったばっかりだし嫌がらせはされたし、外で色々あったから僕たちは泥だらけだったかもだけど、喧嘩はしてない。僕は、食器を返しに厨房に行っただけだ。まあ、誰もいなかったから、料理はつまみ食いはしたけど。うん、歯ごたえのある食感とさっぱりとした香辛料の風味、トロっとした脂がすごくって、なにからなにまで最高でさ……って違うから! おいしかったけど、だけどそれがシロムーだなんて知らなかった! 本当だ!確かに食べたけど、僕は犯人じゃない!」


「シロムーの、友達の首を切り落として半魚人のフライにして食べるなんて、そんなこと僕はしない! 誰かが嘘をついているんだ!」

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