第6話 それぞれの思い 蓮見
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仲間がいなくなり、テスト前ということもあり現実と向き合って一切ゲームをしてこなかった蓮見は夜一人ベッドの上で天井を見つめて過去を思い出す。
俺の役目はもう終わった。
そう……今回は夏休み期間の合宿を通して――赤点を回避できた気がする、と。
どれだけ過酷だったことやら……あの日の地獄を乗り越えた蓮見には自信があった。
後は――。
「よっしゃー! これでお小遣い維持決定! さらには自由な日々に戻ったぞー!!!」
テスト勉強から解放された喜びはとても大きかった。
「それに美紀たちは今頃頑張ってとても強くなっているんだろうな。もう俺が届かない場所にきっといて。応援してるぜ。ってことで俺も今から漫画読むの頑張るか!」
美紀たちが今どういう状況なのかを知らない蓮見はテスト期間中我慢していた漫画を読み始めた。ベッドでゴロゴロしながら時間を気にすることなく読める漫画は最高だった。
「あはは~、なんだよこれ……おもしれぇな!」
楽しそうな声が部屋に響く。
だけど母親は仕事で家にいない。
一人しかいない家は多少大きな声で笑ったぐらいでは誰の迷惑にもならない。
それにゴロゴロしながらポテトチップスを食べても怒られない。
ちゃんとやる事をやった後のコーラはとても美味しい。
たまにはこう言う夜ご飯ってのも悪くない。
――。
――――。
漫画を読み終わった蓮見は歯磨きとお風呂を済ませる。
そのままパジャマに着替えて部屋に戻り電気を消そうとした時だった。
「あっ、……」
部屋の片隅に置いてあるゲーム機が視界に入った。
最近全然使っていなかったためか、もはや部屋の風景の一部となり始めていたゲーム機。
そこには蓮見だけが知る沢山の思い出が詰まっている。
最初はただ誘われて始めたゲーム。
そこから美紀にゲームを楽しんで欲しくて頑張ったゲーム。
そして沢山学び沢山の経験を通して恩返しができたゲーム。
結果、再会した幼馴染とは再びお別れとなってしまった。
だけど過ごした時間以上の何かがそこには存在して時間が経とうと忘れることができない何かがあの無機質な機械の中には沢山宿っているのだ。
その時だった。
身体を駆け巡る血が熱を帯び始めのは。
血に眠った何かが蓮見に訴えかけてくるようだ。
だけど……自分自身本当はどうしたいかわからない蓮見には血が何を言っているのかがわからない。
ある少女たちと同じく蓮見は蓮見で迷いの中にまだいる。
ゲーム機――デバイスを見ただけで高鳴る鼓動は一体何だと言うのか?
自分の役目は終わったはず。
なのにどうしてこんなにも心の中で形ないはずの何かが疼くのだろうか。
「…………」
無意識に身体へ入る力。
なにかが可笑しい。
そう思わずにはいられない蓮見。
ただのゲーム機を見ただけで何でこんなにも感情が揺さぶられるのか。
それがわからない。
本当の自分がどこにいてどうしたいか。
それも……わからない。
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