転生勇者は9代目

無人

第1話 憧れの勇者

"転生"それは中学生くらいの男子ならほとんどがしたいと思ったことがあるだろう。


「あー転生して~」


そう窓の外を眺めながら考えている俺は少年の心を持っている高校2年の男子だ。

決して中二病ではない。俺は少年の心を忘れない健全な青年だ。

異論は認めん。

っとそんなことはどうでもいい。

とりあえず俺は"転生"がしたかった。

ある日、帰宅部の俺は急いで家に帰っていた。

なぜなら今日は俺の大好きな転生系のアニメの放送があるからだ。

内容は転生した主人公が勇者となり世界の覇権を握っていくというまさに少年が憧れを抱くような典型的な作品だ。

つまり少年のピュアな心を持っている俺は憧れを抱いている。だからこそ早く帰らねばならない。

俺は見たいがために一心不乱に走って帰っていた。

だがしかし俺はあることに気づいた。


「鍵がない」


そう、俺はあまりにも急いで家に帰っていたがために家の鍵を忘れてしまっていたのだ。

このままでは俺は家に帰ることができない。

つまり大好きなアニメを見ることができないのである。

俺は急いで学校に戻る。

幸いまだ放送まで時間がある。俺は力を振り絞って走った。

だがしかし、俺はとある交差点で塞き止められてしまった。


「こんな時間ないのになあ…」


俺は赤になった信号を待っていた。

その時俺の横に女子高生がきた。

制服からして違う学校であろうか。

そんなことを思っているうちにその女子高生は赤になった信号の中をズンズンと進んでいく。

俺はとっさに


「え、ちょ…」


と声が出てしまった。

だが女子高生はスマホを見ながらイヤホンをつけているせいか気づかずに進んでいく。

その時トラックがクラクションを鳴らしながら女子高生に向かって進んでいく。

女子高生はようやく気づいたがもう間に合いそうにない。

俺の体は無意識に前に出ていた。

その瞬間、


────ダンッッッッッッッ!!


という凄い音を発した。

それと同時に俺の体はトラックの下敷きになっていた。

幸い女子高生に怪我はなかった。

女子高生と周りの人からは何か話しかけられているがもう何もわからない。

その時初めて俺は"死ぬ"ということを実感した。

とてつもない痛みと共にくる快楽、次々と体が動かなくなっていく絶望感。

すべてを実感し、もう助からないであろうということを悟った。

そのまま俺は暗い闇の中に意識が遠退いていった。

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