第27話 ぶちかますぜ!!!

「保健室のジジ先生ですよね!?この状況はアリサにとって刺激が強すぎます!!」


「ルルップの言う通りです先生。彼女は女子高生に極端に弱いんです」


「そーなんですよ。やからこんなぺちゃんこのぺらぺらのうっすい紙みたいになってる!」



 広場を埋め尽くしたキラースイカの大群は、ジジによって女子高生の大群へと変貌を遂げた。キラースイカに噛みつかれ、スイカ人間にされる心配はなくなったので、購買の中に避難していた人々は解放され、ルルップ・サイカ・メイの3人も、俺のところへ駆け寄って来た。ジジによって女子高生のミルフィーユから救出された俺は、その重量に耐え切れず、ぺらぺらの薄い紙のように押し潰されていた。




「アリサ、たとえ元々はスイカの化け物だったとしても、女の子に重量という言葉を使うのは、私見過ごせないですよ」



 ジジからの注意を受けたので訂正すると、俺はたくさんの女子高生にのしかかられたので、ぺちゃんこになってしまった。決してその体重に関連がないことを、ここでことわっておきたい。不適切な発言、申し訳ありませんでした。




 何はともあれ広場には女子高生が密集しているので、俺は薄っぺらい状態から元に戻ることができず、風で飛ばされるとどうしようもないので、巻かれてルルップの手に持たれていた。



「や~、でもあんな大量におったスイカを女子高生にしてしまうって、ジジ先生めっちゃ凄いですね!あのミホリー先生ですらどうしようもなかったのに。どんな魔法使ったんですか?」


「あら、そんなに褒めてくれるのですか!嬉しい!メイさん大好きです!でも術のことについてはヒ・ミ・ツです!ごめんなさい!」



 こういったノリで見失いそうになるが、やはりジジは神様であるのだと、俺は薄い平面の身に染みていた。ミホリー先生やユイ先生の強大な魔法ですら対処できなかったキラースイカの混乱を、彼女はあっという間に収めてしまったからだ。何故か女神であることは隠しているみたいだが、どうせすぐにポロっと口にし、バレてしまうだろうと俺は思った。



「ジジ先生……あなた、何者なの……?」


「あ!ミホリー先生ですね!私はただの養護教諭ですよ!決して女神などではありません!」



 予想以上に口を滑らせるのが早かったが、ミホリー先生や他のみんなはユーモラスな冗談と受け取ったらしく、それ以上の詮索はなかった。





「私は引き続き、新たに降ってくるキラースイカや、他のエリアにいるキラースイカを女子高生に変えていきます。アリサたちは塔の頂上にいる巨大スイカをやっつけてください」


「私もジジ先生と一緒にキラースイカを魔法で食い止め、他エリアでまだスイカ人間にされていない人がいれば保護をしていきます。『泉の塔』までの道にいたスイカは全て女子高生になっているので大丈夫だと思いますが、あなたたちも気をつけてください」



「先生たちもお気をつけて」とサイカが言い、俺たち4人は『泉の塔』へ向かった。今日は休日で皆私服だから、元々スイカであったかどうか判別できない女子高生の間をかき分け、橋を渡って、泉に囲まれた塔の麓へたどり着く。灯台もと暗しというか、ここまで来ると女子高生はほとんどいなかった。



「アリサ、そろそろ元に戻れない?」


「もう少し……もう少しだけ待って………」


「まぁいいけど……まだ今日は軽くて運びやすいから……木の棒がちょっと邪魔だけど」


「棒はうちが持つわ。にしてもルルップ、えらい難儀やなぁ………」


「さすがに頂上に着いたら復活してね。巨大スイカに対抗できるのも、きっとアリサだけなんだから」


「ど……どーんと任せて………」


「そうよ。アリサが駄目だったら、本当にどうしようもないんだからね。さあ皆、乗って」



 ドラゴンの姿となったサイカの背に乗って、俺たちは塔の頂上へ上昇した。空から今一度学園中を見渡すと、やはりあちらこちらがスイカまみれになっており、一方で「中等部・高等部エリア」から隣の「小学部エリア」までは、ジジの力によって女子高生まみれになっていた。それを見た俺は、冷や汗をかき、しわしわになった。紙になっている俺は水分に弱かった。



 塔の頂上には巨大スイカがいて、「中等部・高等部エリア」の反対側へ、キラースイカを放出していた。そしてもう1人、昨日ルルップに属性の正体を話してくれた、あの掃除のおばちゃんが、モップとちり取りを剣と盾のように構えながら、巨大スイカと対峙していた。



「おばあちゃん!?こんなところで何してるの!?」



 ルルップの叫び声に彼女は反応し、こちらへモップを振った。サイカはおばちゃんの近くへ降り立ち、俺はようやく骨格と肉体の立体的な女子高生の姿に戻った。



「ルルップさんに、アリサさん。それにサイカちゃんと、あなたがメイ・ド・ジャスミーナさんね」


「おばあちゃん、うちのこと知ってるん!?」


「あら知ってるわよ。入学おめでとう」


「おばあちゃん、今はそんなことを言ってる場合じゃないわ。あの巨大スイカを止めないと」


「そうねサイカちゃん。でもあのコ、攻撃の通る気配が全くないわよ。まあ私なんかの攻撃じゃたかが知れてるけど」


「おばあちゃん!アリサならおそらく倒せるの!」


「あらルルップさん!?ほんとなの!?」


「メイ!棒ありがとう!ルルップもサイカも運んでくれてありがとね」



 俺はメイから太い木の棒を預かり、右手で握ったその剣先を巨大スイカの方に向けた。




「さあ!!!いっちょぶちかましてやりますかぁ!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る