とある女の子の話3

 猫さんと歩いて辿り着いた先。そこはハートの女王の住む城だった。

 城の中では裁判が行われていた。

『被告人、前へ』

 そう言われて現れた男の子の姿には、見覚えがあった。

『被告人、本条司は特別司書官としてこの物語に侵入した。間違いないな?』

『うん』

 男の子……――、小さいころの本条くんがうなずく。

『物語世界に入った特別司書官は、物語を修復をする役割を持つ。つまりは、この物語が崩壊しているということだ。そう思うか、奥よ』

 裁判席に座っているハートの王が、ハートの女王に尋ねる。

『思わんね』

『それじゃ、判決は決まりだ。この者を有罪とする』

 それを聞いて、女王がおどろいた顔をする。

「王様は、そんなこと言わない!」

 小さいころの私が傍聴席から叫ぶ。

「ハートの王様は、女王様の顔をうかがっているけど、いい人だもん。誰かを有罪にするなんて、ほとんどしないはず! この王様はニセモノだよ!」

 私の言葉に、ハートの王様の顔が怒りの表情に変わる。

『小娘が、好き勝手言いおって。わしの気持ちも知らないで……』

 どす黒い煙が、王様を覆う。

 姿を消しているけれど、一緒にいた猫さんがささやく。

『あーあー、王様を怒らせちまった。こうなったら、できることは一つしかねぇ』

「何」

『アンタが、特別司書官になるんだ。特別司書官になるための方法は、一つ。物語の住人を相棒とし、名前をつけることだ。時間がねぇ、相棒にはオレがなる。オレに名前をつけろ』

 猫さんにそう言われて、私は叫んだ。

『ムギ! あなたの名前はムギ!』

 ここで夢は途切れた。

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