「姫様!」と呼ばないで

星之瞳

第1話「姫様!」

「姫様!どちらにいらっしゃいますか?姫様!姫様!」

「おい、居たか?」

「いや、居ない。どこに行かれたんだ」

城内では今日も王女を呼ぶ声が響き渡っていた。

「大変だ!!!」

「どうした?」

「門番からの連絡で、姫様が制止を振り切って城外に馬に乗って出たと、知らせが!」

「なんだと、すぐ追っ手を」

「私が行きます」

「おお、ディーン任せたぞ、姫様を連れ戻してくれ」

「解りました」

ディーンは馬の用意をし、門番に姫の行った方向を聞くと馬を走らせた。

「全く、どれだけみんなに迷惑を掛けたら気が済むんだか」ディーンは馬を走らせながらそう思った。

「女だてらに馬には乗りこなすは剣は使えるは。全く型破りのお姫様だ。挙句のはてに黙って一人で城外に出ていくとは、うん。なんだ?」肩に止まった小鳥がチチチと鳴いた。

「こっちか!だがこの先は断崖絶壁になっている。早く追いつかないといくら姫様でも危ない、ハッツ!」馬に鞭を当てるとディーンは速度を上げた。


暫く走ると前方に馬の影が見えてきた。

「あれだな、ティーム少し頑張ってくれ」ディーンは馬に鞭を当てさらに速度を上げた。

王女の馬に追いつくと「この先は危険ですお城にお戻りください」と言ったのだが、王女は無視し走り続ける。

「もう距離が無い」ディーンは王女の馬の前に回り込んだ。ヒヒーン!王女の馬は驚いて前足を高く上げた。

「キャッ!」王女が馬から振り落とされる。それをディーンがしっかりと抱きとめた。

「何をする無礼者」

「それはこの先を見てから行ってくれ」とディーンは王女を抱いたまま断崖絶壁の淵へと進んだ。

「あのまま進んでいたら、落ちてしまうところだったからしょうがなかったんだ。手荒なことをいたしまして申し訳ありません」と言ってディーンは王女を降ろそうとした。だが、王女は降りようとしない。平手打ちぐらいは覚悟していたのだが・・・。

「どうなさいました、城へ帰りましょう」

「あの~、腰が抜けて歩けない」と小さな声で王女が答えた。

「それでは私の馬で一緒に帰るしかありませんね」

ディーンは馬に王女を乗せ自分も乗り込んだ。王女の馬を引きながらゆっくり城へと帰った。


ディーンが王女と馬で帰ると城は大騒ぎになった。

「姫様ご無事でしたか」口々に使用人が騒ぐ。

「断崖絶壁の近くでようよし止めたんだ、腰が抜けているそうだから手当てしてあげてくれ、俺は馬を連れて行く」

馬から王女を降ろし、使用人たちに預けるとディーンは2頭の馬を引いて馬屋へと向かった。

「さ、姫様こちらへ」使用人に連れられて、王女は部屋へと戻った。







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