夜空の下

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プロローグ

死に場所を、探していた。


最期をこの丘、この街で一番星に近い夜空の下に決めたのは、ここに忘れられない思い出があるからだ。


ここに来る前に、『彼』の家には寄ってきた。


彼が妻と眠りについていることは把握済みであり、既に『爆弾』はセットしてある。


僕の望みはただ一つ。


自らの命をもって、彼に『責任』をとってもらう。


ねぇ。


今日という日にすがりつきながら。


ここまで。


ここまでやっと、生きてきたよ。


君と僕の人生は、もう変わってしまったけれど。


不思議だね。


いま車の窓から見える星空は、何も変わらない。


あの日君と見上げた星空のように、とても綺麗だったよ。








            ◆   ◆   ◆








「ねぇ、知ってる?」


「うん?」


「星の輝きって、命の輝きなんだよ。ただの光じゃなくて、命の光。その輝きが強ければ強いほど、早く、儚く消えていくんだって」


「星の光は命の光か……なるほど、そんなふうに考えたことはなかったな。輝きが強いほど早く消えていくって、そんな光みたいな人って、人間にもいるよね」


「うん、なんか人に似てるな~って思って。この世界って、ひょっとしたら、いろんなところで繋がってるのかもしれないね」


「だとしたら、あの星の光は、僕たちに何を伝えようとしてるんだろう」


「わからない。けど、こんなに暗い夜の中でも、一筋に光る星って……」


夜空を埋め尽くす満天の星の中、君はその光を探し求めるように大きく手を広げて、振り返ると、僕に微笑んで言ったんだ。


「何かの希望なんじゃないかな」

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