トマトじゃ人を殺せない

@nausa

第1話 始まりはいつもこの部屋

「―ん~?」

 目を覚ますと的場大地は白い部屋にいた。

 「…?」

 状況が理解できず辺りを見渡すと自分も含め男女8人が自分と同じように目を覚し辺りを伺ったり、今の状況に驚愕しているようだ。

 「ここはいった…」

 言葉を言い切る前にいきなり何も無い空間からスーツの男が出てきた、驚きで目を見張る、他の面々も同様にそのいきなり出てきた男に目を白黒させている。

 「皆様、今日はお集まりいただいてありがとうございます」

 いきなり出てきたスーツの男が8人を薄く見ながら話し出す。

 「皆様には今から実験に付き合ってもらいます、付き合っていただいた場合、報酬として3億円をお支払いします」

 まずい。

 的場は猛烈に焦燥に駆られていた。

 凄い既視感がある状況だ主に漫画やアニメでやっている…。

 「ただし3億円は生き残った人だけ、つまり全員を殺した最後の1人にだけお支払いする事になります」

 んあぁああああ!やっぱ来やがったデスゲームだコレ!

 「ふっざけんなぁ!ゴラァア!」

 的場が心の中で絶叫すると同時に連れてこられたうちの強面の男が叫ぶ。

 「っざけんなボケ!こんな訳の分からねぇ場所に連れて来られていきなり殺し合いだ?頭がわいてんのかおめぇわ!」

 強面の罵声を皮切りに次々連れて来られた面々がスーツの男に唾を飛ばす。

 早くここから出してくれと哀願するもの、怒りで顔を赤くし罵声を浴びせるもの、状況を説明してくれと懇願するもの、全ての感情が唯一この場の理解者であるスーツの男に向けられる。

 するとスーツの男がすぅーと手の平を前に出す。そして手の平を握った瞬間。人が弾けた。

 パーンという破裂音と共にびしゃびしゃっと男の肉片は床を赤黒く汚す。

虚をつかれたように全員が音がした方をみる。神経質そうな男のいた位置に何故かぐちゃぐちゃな肉の塊が出来ている。各々が状況が理解出来ずぼーっとみていると。

 「きゃぁあああああ!!!」

 一泊置いて状況を理解した活発そうな女が絶叫をあげる。

 「あ…?何だよこれ?」

 強面の男が顔を引きつりながら無理解を示す。

 「ルールを説明します」

 無機質な声が白い部屋に響き、バッとスーツの男に全員が向き直る。

 「1つ目は先程も申し上げた通り、最後の1人になるまで殺し合いをしていただきます。期間は2週間つまり14日間の間に1人にならなかった場合は残っている全員が死亡することになります。2つ目は島の外に出ようとしないこと、一定距離まで島から離れると警告のあと5分以内に戻らなければ死亡します。基本的にはこの2つがルールになります。何か質問はありますか?」

 各々が顔を伺いながらキョロキョロしている中。

 「質問いいですか?」

 利発そうな男が薄く笑いながら手を上げる。

 「島で殺し合いと言っていましたが人数はここにいる全員で大丈夫ですか?」

 「そうです、この中の8人…いや、この中の7人で殺し合いをしてもらいます」

 利発そうな男が軽く頷く。

 「島と言われましたが規模はどれぐらいですか?」

 「島の全長は28㎢です」

 スーツの男が喋り終えると活発そうな女が手を挙げる。

 「3億円が貰えるっていうのは本当なんですか?」

 遠慮しつつも力強い目でスーツの男を見つめる。

 「はい、その通りです。最後の1人になられた場合、報酬として3億円差し上げます」

 スーツの男が指を鳴らした瞬間、どさっとスーツの男の隣に札束の山が出た。

 各々が札束に目を見張る。

 「おい」

 目の下に深いクマがある男がスーツの男に尋ねる。

 「そこは無人島なのか?2週間となるとかなり長いが食料は?住居もないのか?」

 「基本的にはサバイバルをしていただきます。ですが、3日間置きに支援物資が島のランダムな所に設置されます。箱には白煙等が付いていますのでそれを目印にしてください。」

 「もう一ついいですか?」

 利発そうな男が尋ねる。

 「先程の男を破裂さしたり、札束を出したりしたのはどういうマジックですか?」

 「この力は超能力です、これから皆様が1つずつ能力を持ち殺しあってもらう力の1つですね」

 スーツの男の話を聞き各々がざわつく。

 「そろそろ宜しいですかね」

 スーツの男がスッと指を上げる。

 「14日後に会いましょう、皆様に幸運があるように」スーツの男が指を鳴らしたと同時に視界が暗くなり、そこで意識が無くなった。


ザザーン、ザザーンと波の音が聞こえる。

 「う、ここは」

 的場は波の音で目を覚まし、うつぶせの状態からゆっくり立ち上がった。ぺっぺと口の中にあった砂を吐き出し体の砂を落とす。上からのまぶしい日差しに目を眩ませ手で傘を作り辺りを見渡した。

 「海…、建物もチラホラ見えるな…」

 辺り一面水平線が広がる海をぼうっと眺めながら考える。

 「夢じゃなかったのか…うっ」

 的場は先程起きた出来事を思い出し吐き気を覚える。オエーと地面に四つん這いで伏して吐いた時、手の甲に目みたいな紋様が出来ている事に気づく。

 「…?なんだこれ?目?気持ち悪い…」

 恐る恐る触ってみると『的場大地、能力、無限に手の平からトマトが出せる能力』と紋様から機械的な音声が流れた。

 「おわぁ!びっくりした!」

 思わず後ろにのけぞる。恐る恐るもう一度、紋様に触ったが紋様からはもう声はしなかった。的場は先程の声を思い出す。

 「手の平から無限にとまとが出せる?」

 的場は考える、これがもしデスゲームならこの超能力とかいうやつで戦うのだろう、最近見た漫画でも似たようなものを見た。的場は自分の考えが的外れでないか少し考え頷く。だとしたら分からない事がある。

 「とまとって何だ?」

 これがデスゲームと仮定するならトマトのはずがない。自分が知らないだけで、どこかの国には、とまとという暗器や能力があるのだろう。的場は手の平を見つめる。辺りを見渡しながら近くに人の腰ぐらいの岩があるのを見つける。おもむろに手の平を岩に向け心の中で『出ろ!』と命じた。トマトが出た。

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