空の姫よ、雲の神々の怒りを鎮めたまえ!

マンホール

カチ…。


『こちらでは、もう1年もの間、大干ばつが続き、地は干上がり、農家は、手の打ちようがないと言う嘆きの声が広がるばかりです』


カチ…。


『こちらでは、過去に例を見ない大雨に、民家だけでなく、商店や、ビルのエレベーターなどが止まるなど、とてつもない甚大な被害が出ています』


カチ…。


『こちらでは、1日に何百個と言う雷が民家や電柱、木など、辺り構わず、と言った感じで落ち、非難する場所もなくなって来ていると言った、異常な気象が続いています』


カチ…。


『こちらでは、10月としては前代未聞の大雪によって、交通が麻痺し、住民は、食料を調達するのにも困っている、と話し、停電も起きており、ストーブも使えない家が多く、これ以上の被害拡大の恐れを懸念する声が、高まっています』


カチ…。


『こちらでは、直径20㎝を超えるとてつもない大きな雹が降り、車のフロントガラスなどに収まらず、家屋の窓や、屋根までもを突き抜け、死傷者も多々出ていると言う事態に、国は…』





「どこもかしこも、世界中、おっかしいねー…」


爽嬉さきは、夕食の支度をする母親を背に、とんでもない事態を、自分は関係ない、と言った感じで、テレビのチャンネルを回していた。


「そうね。でも、爽嬉、ここら辺も、いつそう言う状態になるか、分からないんだから、あんまり悠長構えてたらダメよ?」


母親は、冷静である。





富永とみなが爽嬉、14歳。ごくごく普通の中学生だ。…だった。もうすぐ来る、あの日を迎えるまで…。




その頃、世界…地球は、余りにおかしな状態にあった。あるところは1年も雨の降らない記録的干ばつ。あるところは、船で生活せざるを得ないほどの大雨。あるところは、地価のフィルターにいないと生活できないほどの20㎝を超える程の大粒の雹が降り、あるところは、普段、全く雪の降らない街で、壁のように降り積もる大雪。あるところは、木々をなぎ倒し、家の中にいても、どうしよもないほどの限りなくあったたら死ぬであろう雷…。



それは、世界中で起こっていたけれど、爽嬉の傍では、まだ、起きていない、他人事の出来事だった。


干ばつも、大雨も、大粒の雹も、大雪も、雷も…。確かに、日本でも、少しは異常気象が確認されていたが、とりあえず、爽嬉には、関係のない事だった。


あの日まで…。そう。あの、に落っこちて、へ行かなければ、世界は、地球は、今頃、滅んでいたかも知れない。


そんな事は、その時の爽嬉には、全く予想も出来なくて、全く関係のない事で、全く似合わない事で…。




―次の日―


「おはよー。柊奈ひな


「あ、おはよう。爽嬉ちゃん」


何の変哲もない、月曜日の朝の風景。しばらく、2人は、学校に向かって、いつもの道を歩いていた。昨日やっていた、テレビのバラエティー番組の感想とか、英語の宿題は出来たかとか、まだ、柊奈は好きな人に告白はしないのか、と言ったら、爽嬉は柊奈に怒られた。


その時だった。


「爽嬉ちゃん!!危ない!!」


「え………」


ズッ…!!!


「キャ――――――――――!!!!」


何故だか、マンホールの蓋が開いていたのだ。


(絶対痛い!!)


痛みを、覚悟した、瞬間だった…。


ポワンッ……。


痛いどころか、最高級ベッドのマットの上にでも落ちたかのような感覚に、爽嬉は…、





と、思った―――…。

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