午後のひととき

ろくろわ

午後のひととき

 遅い朝

 洗濯回し

 風呂洗い

 それから掃除

 時間は足りぬ


 点けたまま

 見る暇の無い

 テレビから

 耳に残るは

 天気の予報


 午後は雨

 綺麗なひと

 空を指す

 パステル色の

 雨映える傘


 窓の外

 機嫌の悪い

 雲が泣く

 溜めた涙は

 いつ溢れるか


 一通り

 家事も終わりに

 近づいて

 残すは部屋に

 干す衣類だけ


 降りだした

 雨に戸惑う

 人達を

 濡れない部屋で

 密かに眺め


 一休み

 焙煎された

 豆を挽き

 お湯が沸き立つ

 音に癒され


 焼菓子と

 注いだお湯が

 豆に染み

 辺りを包む

 贅沢な時間とき


 この時間とき

 為に頑張る

 私はね

 メイドのいない

 お姫様かな


 窓際の

 小さな机

 飾りつけ

 静かな時間とき

 香りと共に


 雨音が

 聴きたくテレビ

 消してみる

 一人になれる

 そんな気がした


 角砂糖

 黒い水面みなも

 揺れ沈む

 小さな泡が

 浮かんで消える


 雨の

 遠雷届く

 午後三時

 息吹く世界に

 委ねる心


 読みかけの

 文庫本には

 新しい

 歩みの遅い

 栞が一つ


 読みめく

 手が行く先は

 焼菓子と

 ほんのり冷めた

 午後の友達


 読み進む

 話の中に

 いざなわれ

 私は何処どこ

 いるのだろうか


 いつの間に

 雨降る音が

 聴こえぬと

 外見てみれば

 降り止まぬ雨


 ただいまと

 扉が開き

 音が降る

 時間ときの流れが

 素早く戻る


 飲みかけの

 底に留まる

 角砂糖

 口に含んで

 余韻をさら


 音が舞う

 テレビも既に

 点いている

 小さな雨の

 は聴こえない












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午後のひととき ろくろわ @sakiyomiroku

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