倍の声援
二回戦があっという間に終わり、さすがに疲れたようにため息を溢すサラ。人混みを掻き分けて、正面の出入り口から廊下に出ると、観客席に戻るため、また人の流れに逆らって進んでいく。
その途中で、思わず足が止まった。
「あの! 先ほどの試合、すっごい感動しました!」
「私、西高の加藤です!」
「更木さん、カッコ良かったです!」
数少ない女子の剣道部員が、試合終了直後にサラを追いかけてきたのだ。エールを送るために廊下の途中で待っていて、お目当てのサラが来ると、喜色の声を上げた。
ただでさえ、石巻が現れて、ドギマギしていたのに、今度は倍の人数で声援を送られると、サラは非常に困惑する事となった。
「あ”、あ”あ”っ」
声が出ない。
「中央って、剣道部なかったはずですけど。新しく作ったんですか?」
目の前にいる女子達は、全員華やかな子達だった。
髪の長いキラキラした子もいれば、髪をサイドテールにしてキャピキャピしている子もいる。ボーイッシュな子はワクワクした様子で詰め寄ってくるし、試合よりも格段にプレッシャーが掛かっていた。
見るからに今時の女子高生って感じだ。
対して、サラは何度も言うが、真っ暗な人生を歩んできた女子。
耐性などあるはずがない。
「次の試合、応援してます」
「がんばってくださいね」
「こんなに楽しいの初めてなんだけど。あはっ!」
女子達は手を振り、サラがペコペコしながら去っていく背中を見送る。
その女子達の向こうには、飲み物を持った石巻が「うぅ」と、しょんぼりしながら立っていた。
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