ハーフ系美少女は天才剣士

烏目 ヒツキ

女子高生、剣士になる

高校一年

 更木さらきサラは、友達がいない。

 保育園時代から人見知りが激しく、みんなの輪に入っていけない性格だった。


 引っ込み思案な性格は、小学校になっても変わらず、隅っこでボーっとしたり、トイレに行く振りをして、苦痛の日々を過ごした。


 サラはアメリカ人と日本人のハーフなのだが、この外見も壁を作る原因になっていた。

 鼻が高くて、ペンキを塗ったように白い肌の色。

 日本人離れした顔立ちは、周りにとって異質だったのだろう。


 だからといって、別に周りを責めたいわけではなかった。

 もう少し、踏み込む勇気があれば、変わっていたかもしれないのは、サラ自身が分かっていた。


 学校には行くけど、それ以外は家にこもる事が多くなった。

 中学になった頃には、ブクブクと太り、女子の身でありながら巨漢となってしまった。


 両親からは心配され、外に出るのも怖くなったサラは、部屋にこもって映画、ドラマ、アニメ、番組など、適当に鑑賞しては寝る毎日を送る。


 そんな鬱屈とした日々を過ごしていたサラは、コンビニ帰りで海沿いに建つ道場を見つける。ボロボロの看板に書かれた連絡先を見つめ、ふと自分のこれからを考えてしまった。


(どうせ。このまま、生きていても、苦しくなるだけだろうなぁ)


 と、考えながら、頭に浮かぶのはカッコ良く立ち回る、サムライの姿。

 サラは、サムライが大好きだった。


 勧善懲悪の存在として、事実とは別の概念を抱いていたが、刀を振るう姿には恋に近い感情が芽生えていた。


(サムライになれば、カッコ良くなれるかな。そしたら、友達もできて、遊んだりして、いっぱい……)


 自分を変えたかった。

 他人の目を見れない。

 喋る時に、どもってしまう。

 モジモジとして、前に出れない性格。


 全部捨てたかった。


(友達、……欲しい)


 妄想の中で一通り自分が活躍する様を思い浮かべると、「ふひっ」と気色の悪い笑みをこぼす。


「が、頑張ってみようかな。ふふひひ」


 この後、サラは

 厳しい日々を過ごした、中学校生活。


 そして、高校生になり、中央高校に進学。


 五月下旬に県立体育館で開催される、総体予選。


「アアッ!?」


 目を剥いた鬼の形相で、鍔迫り合いをするサラの姿が、そこにはあった。

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