第15話 バレかけた勇者

「なんでって……、ココにちょヤバなモンスターが出現したって聞いたから退治に来たんだーけどぉ。エレぴ達もそういうクチじゃなかったのぉ~?」


「俺はあんなのが出るなんて知らなかったんだよ。どこで知ったんだよそれ?」


「どこって…………あ! そっか、あーしが近くの教会で盗み聞きしたんだった。


いやさぁ、そこに通ってるおばあちゃんがシスターと世間話してたんだよね。なんかさぁ、最近坑道の方がピピッ! とヤな感じするから気を付けた方がいいよって。


んで、気になって行ってみたらマジでヤベー奴がいたってワケ。

あーしってば冴えてるぅ~」


 そんな個人的な情報を俺が知るわけ無いだろ。


 だが助かったのも事実だ、どうせコイツの事だからホントに気になったから来てみただけで後の事なんかな~んも考えてないんだろうな。


「それよりさ……」


「うん?」


 ラティがジーっと俺の隣にいるラゼク達を見ている。その視線に思わずたじろぐラゼク。

 ラティという女は遠慮という言葉を知らず、距離の詰め方を意識する事もない。

 そう思ったから行動する。単純なヤツだ。


「な、何よ?」


「う~ん、この子もしかしてエレぴとガチラブな関係とか」


「おいおい、俺の女の趣味はお前もよく知ってんだろ?」


「おっぱいのおっきな女の子!」


 即答された。


「なら分かるだろう? 俺がこんな哀れな胸部装甲の女を好き好んで連れ歩くワケないじゃん。ただの同僚、いや、俺のが先輩だから後輩だな」


「哀れ? よくもまあそこまでバラエティー豊かに人の事を罵れるもんね。アンタの脳みそは胸の無い女の子を罵倒する言葉で埋め尽くされてんの、ねぇ? 答えなさいよ!」


「ちょ、やめて! 痛っ。耳が、耳がね、伸びちゃうのよ! 耳元で怒鳴るのも勘弁して!!?」


 耳を強引に引っ張られ、その穴に向かって怒号を挙げられる。このアマ、ちょっとしたジョークじゃないのよ。いたたたた!


「ありゃりゃ、尻に敷かれてちゃってる感じ? エレぴってばお似合~い」


「どういう意味だよ?! 痛っ、もうやめ、離して!」


「ふん! それより、結局この子は誰なの?」


「いつつつ……。ああコイツ? 俺の元パーティーのメンバー。ラティーレン……ラティっていって、聖職者なんだよこの見た目で。コスプレじゃなくてマジで」


「うっそぉ……」


「イェーイ! 今は出張サービスで僧侶やってまっす! ぶいぶい」


「えぇ……、本当に聖職者だったの」


 なんだその顔は、まるで嘘をついていたかのように言いやがって。

 俺も初めて会った時は冗談の類だと思ってたぜ。きっと同じような顔してたんだろうな。


 そして、今度はティターニの方を向いた。また俺との関係だかを聞くつもりか?


「あ、あの~私に何か御用でしょうか?」


「うん? う~ん……もしかしてティリち」


「あああああああ!!!」


 うわ!? びっくりした。


 どういう訳だけ急にティターニが大声を上げ始めたのだ。こんな大声とか出せるんだな。

 となりのラゼクもびっくりして尻尾がピンと立っていた。やっぱりあれ、ああいうギミックなのか。


「急にどうしたのよティターニ?」


「あ、ああいえそんな。た、大した事では無いのですが……」


「ねぇやっぱティリ」


「う゛う゛ん゛!! あのラティーレンさん、でしたか? ちょっとお話したい事があるので向こうに行きませんか? いえ、直ぐ終わりますので」


「えぇ? 話ならここですればいいじゃんティ」


「さあ行きましょう!! いえ簡単なお話をするだけなので!」


「ああちょ!?」


 何かを言いかけたラティだったが、ティターニが話があるようでそのままズルズルと引きずられていった。



(ティリちん、朝から見ないって思ったらこんなトコで何やってんの?)


(ボクにも色々事情があるんだ、今はこちらに合わせて……)


(そんなにエレぴと一緒に居たかったら追い出さなきゃよかったじゃん)


(まさか本当に出て行くなんて思わなかったんだ! 反省してこれからもボクとコンビを組んでやっていくと思ってたのに……!)


(え~考え甘くない? エレぴの性格考えなよ、反省なんてする訳ないじゃん。大体二人ってコンビ組んでたっけ?)


(ボクの中ではパーティを支えるコンビだったんだ! ちょっと女性のお尻を追いかける癖だけ控えて貰えればそれでよかったのに……)


(だからって女装までして)


(ボクは女だ! 知ってるだろキミも。……と、とにかくここはボクと口裏を合わせてくれたまえ)


(仕方ないにゃあ、もう)



「何話してのあれ?」


「さあ? 急にどうしたのかしらね」

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