池の淵からの手紙
ミンイチ
第1話
梅雨に入り、カエルが鳴く声が聞こえる池の淵にその女性は立っていた。
彼女の顔は長い髪で覆われていて見えないが、腕や足の様子からすでに死んでいるのだろうと思われる。
以前から「声が聞こえる」として有名な公園だったが、じっさいに見ることになるとは思わなかった。
私に気づかれる前に公園から出ようとしたが少し遅かった。
「あノ」
さっきまで池のほとりにいたはずなのに、すぐ横まで来ていた。
人の声であるはずなのに、まるで全く別の生き物が強引に声を出しているように聞こえてしまう。
「紙ヲ、ふうトうを、キってを、買ッてキてもラeないでしョうカ」
その言葉を聞くと、この得体の知れない存在の望むものが何か全て理解してしまった。
そして、それらを買ってこなければいけない、という強迫観念に駆られて近くの店に行って望みのものを全て買ってきてしまった。
彼女は公園のベンチで待っていた。
傍には赤黒い液体とペン先にインクをつけて使うタイプのペンが置いてあった。
買ってきたものを手渡すと、彼女は用意していた液体を使って文字を書いていく。
髪で隠れて何を書いているかは見えないが何かよからぬことが起きているのではないかと感じてしまう雰囲気を出している。
「これヲ、ポずトに。」
書きたいものを全て書いたのか、いくつかの封筒を渡してきた。
彼女はそれを渡すと同時に消えていった。
後には古いケースの中に入ったCDが残っていた。
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