第8話 暗殺団

 「前方にクラスD数十体、1人5体倒せ。」


 「了解。」


 3人はそれぞれ機獣の力を使い出す。機獣の力を使う際は体のどこかが機獣化する。


 カイの右腕に高熱のコードのような黒いものが巻き付く。手の平から出てきた放出口から熱が放たれる。


 「熱殺蜂手」


 カイの右腕に触れた機獣たちが融けはじめる。


 東の機獣はまだ能力がわかっていない。そのため機獣の能力は使わず、カロンから渡された剣で機獣たちを斬る。基礎的な力はカイたちの機獣より上なため、能力がなくともクラスDの機獣には難なく勝てる。


 ヴィオラは何かを抱えた状態で機獣たちの中を潜り抜ける。攻撃を受けても機獣の能力ですぐに再生できる。


 「クロ。」


 クロの尾から伸びる黒いガムは機獣たちのコアを引き剥がした。


 「さすがに強えな。さてじゃあ俺も、」


 カロンは次から次に機獣の体に触れていく。カロンに触れられた機獣は一切動かなくなる。


 「こっからは俺が機獣どもに触れていく。お前らは俺が触れた機獣をやれ。」


 「はい。」


 「そうはさえねえよ。」


 その声と同時に銃弾はカロンの頬をかする。


 「エイム鈍ったな。」


 樹上に座り込む黒服の男が銃を投げ捨てる。


 「俺は 暗殺団 MattLeaves を束ねている黒崎という者だ。今はブラッドに雇われている。」


 「暗殺団だか何だか知らねえが、単身で出てきたことは愚行としか言えねえな。」


 「単身なわけないだろ。」


 黒崎の後ろから4人の配下が現れる。


 「まあ、そーだよな。」


 「どうします? カロンさん。」


 「俺は黒崎とやる。お前らは部下の奴らを、あいつらクラスCはあるだろう。気を付けろ。」


 「もちろんです。」

 

 「さあて、仕事だ。」


 黒崎の掌から黒のギザギザとした刃物が飛び出す。


 次の瞬間、黒崎はカロンに切りかかっていた。カロンは右腕に切り傷をおう。


 「は、速いな。」


 「お前ら、ガキ共を殺り次第俺に加勢しろ。」


 「御意。」


 「来たな。」


 顔に赤い装飾の入った細身の男が赤色のボールを投げる。


 「避けろ。」


 ボールは地面に当たる。当たった瞬間、赤色の液体が飛び散る。


 「毒だ。2人とも触れるなよ。」


 カイの言う通り、赤い液体は猛毒であった。


 「避けちゃ駄目でしょうが、キャッチボール嫌いなのかい?」


 細身の男が言う。


 黒のボサボサの髪の女が東に殴りかかる。東はすぐに剣で防御したが、


 「ドゴオオオン!!」


 轟音と共に東の体は数十メートルほど先まで吹っ飛ばされる。


 「東の機獣が、力負けしたのか。」


 女の体は機獣と一体化し巨大化していた。灰色の皮膚に細長い腕、身長は3メートルはあるだろう。


 「でかくなった分、好都合。狙いやすいぜ。熱殺、」


 カイはすぐに体を前に走らせた。カイの後ろにまわりこんでいた老婆は目にも止まらぬ速さでナイフをカイの足元に振りかざしていた。すんでのところでカイはナイフをかわした。


 「物理攻撃なら私が、」


 ヴィオラが走り出した瞬間、黒のボロ布を羽織った男が地面に触れる。


 「転送。」


 その瞬間、赤色の鉄骨階段が飛び出す。


 「くっ、分断目的か、だとしたら狙いは東か。」


 「カイ。」


 ヴィオラがカイに駆け寄る。


 「まずい。」


 東は汗を垂らした。老婆に、巨大女、そして毒使いが一斉に東に襲いかかってきたからだ。


 東は階段から飛び降りる。だが、階段の形が変わり、地上に降りれないようになっていた。


 「くっ、」


 東は女の攻撃をかわした。次に毒ボールが3つほど飛んできた。狭い階段上ではボールをかわせないと悟った東は上にジャンプした。ボールより高く跳び、毒をかわした。


 だが、上にずれた階段にぶつかり、落下する。落下した先にいた老婆のあまりにも速い一撃は東の足を切りつける。


 「グッ、」


 「良かった。まだ浅いな。」


 「その声は、カイ!?」


 カイは高熱をまとった右腕で老婆に攻撃をする。しかしすぐさま階段の形は変わる。


 「この階段。どうやってのか知らないが何かの能力で転送したものらしいな。なら、1回ぶっ壊せば問題ないわけだ。」


 カイは右腕の熱で鉄骨階段を溶かした。


 「鉄を溶かした!? どんな温度だよ。」


 毒使いの男が呆れたように言う。


 「気になるなら教えてやるよ。あんた、キャッチボール好きなんだってな。」


 カイは右腕に溜め込んだ熱を球体にした。


 「熱殺蜂球。」


 カイは右腕に溜め込んだ球体を毒使いの男にとばした。


 「グワッ。」


 熱のかたまりは天敵に纏わりつくミツバチのように男の体をおおった。


 「アァーーーッ!!」


 熱により男の機獣のコアは破壊された。数秒ほど叫んだ後男は倒れた。


 老婆はカイの後ろにまわりこんでいた。


 「させないわ。」


 クロから伸びる黒いガムはナイフを持っている老婆の右腕をとらえた。

 

 「甘いな。クソガキ。」


 老婆はすぐにナイフを左手に持ち変えてヴィオラの足を切り裂く。


 「フッ。まずは1人。」


 「残念。」


 ヴィオラの足はすぐに再生し、老婆からナイフを取る。


 「ま、待って若造よ。」


 老婆の言葉など一切聞かずにヴィオラは老婆の頭をナイフで刺した。


 東は体制を立て直し、すぐに女の両腕を切りつける。


 「力比べなら負けねえよ。」


 「ドゴオオオン!!」


 東の一撃に女は数十メートルほど先にとばされる。


 「お返しだ。」


 「怪我はないか? 東。」


 カイは東に駆け寄る。


 「だ、大丈夫だよ。」


 ドスッ。


 ヴィオラは黒のボロ布の男に止めを刺す。


 「あいつ、まだ生きてるわ。」


 「そうだな。」


 カイは右腕に熱を溜め込む。


 「ちょ、ちょっと待ってよ、あいつはもう倒れて動いてない。わざわざ殺さなくても。」


 「生かしておいても何もメリットないだろ。」


 カイは女に向かいながら言う。


 「2人とも、なんでそんな簡単に、人を、殺せるの?」


 「……。それが戦争ってもんだろ。」


 「東。ここで道徳心なんていらないのよ。思い出しなさい。あの日、私たちから全てを奪った機獣への怒りを。」


 「……。」


 「ヴィオラ、あんま変なこと言うな。」


 「フフフッ。盛り上がってるわね。」


 金髪に中華風の着物を着た長身の女がビル街の奥から現れる。 

 

 「誰だ?」


 「私は妖奇。」


 「……。千夜の人か?」


 「いいえ。」


 女はあっさりと答える。


 「盗賊団か? それとも暗殺団……。」


 「どっちでもないわ。まあ今から死ぬあなたたちには関係ないわ。」


 妖奇が指を動かした瞬間、女の四肢はバラバラに吹き飛んだ。


 「フフッ。」


 「!?」


 「まずい。こいつ、この感じ、別格だ。間違えなく、クラスAはある。」


 

 

 


 


 


 

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