殺し屋の選択
杜鵑花
第1話 1日目 朝
俺、東雲皐月は殺し屋だ。
今まで1人たりとも殺しそこねたことは無い。
しかも、全員、即死させている。だから俺は「冷酷なキラー」と呼ばれていた。
だが、それも昔の話だ。
今は俺はパートナーと一緒に殺し屋をやっている。
パートナーの名前は神田水面、「温厚な殺し屋」という名を持つ女性だ。
彼女の性格は俺とは正反対で誰にでも優しく接していた。
殺し屋とは思えないほどに――――
翌朝、俺は自室で目覚めると同時にスマホを取る。
時刻は朝7時。
メッセージ件数が1件。
殺しの依頼だろうか。
俺はこのメッセージの内容を見るまで、水面との平穏な1日が始まると思っていた。
俺はメッセージの内容を見る。そして、驚いた。
メッセージには「神田水面の殺害を依頼します。出来なければ東雲皐月、貴方を殺害します。期限は今日から3日間です。拒否権はありません。」
と書かれていた。
俺は少し悩んだ。
俺は正直、水面のことをとても良いパートナーだと思っていた。出来れば失いたくない。
だが、そんなことは出来ない。切り捨てる日が来たということで諦めよう。
自分の命の方が大事だからな。
俺はここで初めて「冷酷なキラー」と呼ばれていた理由が分かった。
リビングから彼女が俺を呼ぶ声が聞こえる。
彼女もかなりの実力者だ。殺す機会を見つけた方が良いだろう。
「今いくよ。」
俺はリビングに下りた。
水面は朝食を作ってくれていた。
やはり良いパートナーだ。
俺達は少し会話を交わしながら朝食を食べる。
何の変哲もないいつもの日常。これも今日で終わりか……
すると、突然。水面が
「もし、皐月が私の事を殺すように命じられたらどうする?」
と問いかけてきた。
その問いかけに俺は少し動揺する。バレたか……?
俺は出来るだけ平然を装って答えた。
「殺すね。結局のところただのパートナーだ。しかも殺しの。切り捨てる時が来たって言うことだ。ところでどうしてこんなこと聞いたんだ?」
「ただ気になっただけ……それにしても皐月って冷たいんだね。どうして冷たくするの?」
「冷たくしないと後悔する……それを過去から学んだだけさ。」
「どうして冷たくしないと後悔するの?」
「冷たくしないとどんどん人が集まってくる。そうすればいずれは友達や恋人などが出来る。でも、出来たら出来たで失う時が辛い。もう俺はあんな経験はしたくないんだ。」
「ふ〜ん。私、皐月のことが結構好きなの。だから私は、皐月には過去を乗り越えて欲しいと思う。」
彼女の唐突なカミングアウトに俺は暫く固まってしまっていた。
「過去を乗り越える?そんなの無理だね。」
「でも、いつかは乗り越えなきゃいけない時が来る。そうでしょ?」
「もう、この話は終わりにしよう。」
その後、俺達は黙々と朝食を食べた。
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