第8章358話:別視点3

ゾネットは言った。


「……まあしょうがないわね。どうやら逆らえないみたいだし」


「くくく、せっかく召喚されたのだ、久しぶりに暴れるとするか。相手が敵国の兵士でないことが残念だが、それも一興よ」


とダレイスは不敵に笑った。


「まずは、そこにいるヴァンパイアを蹴散らせ」


とアレックスが命じた。


ダレイスとゾネットの視線が、リファリネスに向く。


「承知した。こいつを叩き潰せばいいのだな?」


と、ダレイスが戦意をみなぎらせる。


「……!」


リファリネスはとっさに魔法弾まほうだんを、ダレイスに向けて放出した。


しかし。


「ふんヌッ!!!」


ダレイスが全身に力を込めて、筋肉を膨らませ、魔法弾まほうだんを弾き返した。


さらに直後、ダレイスの姿がかき消え、リファリネスの至近距離に現れていた。


「!?」


あまりの速さにリファリネスの反応が遅れる。


ダレイスの腕の筋肉がたわめられる。


そして放たれるのは、轟風ごうふうをまとった超重量級ちょうじゅうりょうきゅうのパンチだ。


その拳がリファリネスの腹を打ち―――――


リファリネスをぶっ飛ばした。


彼方まで吹っ飛ぶかと思われたが、途中で5階建てのアパートメントに直撃したリファリネス。


リファリネスは崩れた瓦礫がれきに埋もれて気絶した。


「ぐはははは、見たか? これが王の筋肉よッ!」


ダレイスは己の筋肉を見せびらかすようなポージングをした。


彼は王であるが、王になる前は、野生的な格闘家であった。


ガントレットさえつけない徒手空拳としゅくうけんを愛し、素手と筋肉のみで熊を倒し、虎を倒し、竜を倒し、魔王を倒した勇者。


英雄というよりは蛮族のような男である。


「暑苦しい王ね。これが私の先祖なのかしら」


とゾネットは肩をすくめた。


ちなみにゾネットは外から王家に入ったので、ダレイスは先祖ではあるものの、血のつながりはない。


「さすがに歴代最強王ダレイスは強いな。その調子で私のために働け」


とアレックスは鼻を鳴らしながら言った。


いけ好かないアレックスの態度に、ダレイスは腹を立てるふうでもなく、不敵に笑った。


「では、我は学園にでも行くとしよう。現代の若人わこうどたちを、見てみたいのでな」


そう告げてダレイスは、歩き出す。


ゾネットも言った。


「私はそのへんの街路を適当にぶらついてくるわ。現代の街並みを眺めてみたいから」


そして彼女も歩き出す。


一人残ったアレックスは


「それにしてもルチルはんか」


アレックスが暴れている理由は、ルチルをおびきだすためだ。


ところがルチルは一向に現れない。


「ならば、もっと王都を破壊せねばなるまいな」


そうつぶやいたアレックスは、召喚魔法を発動する。


一度倒したことのある魔物を召喚することができる【魔霊召喚まれいしょうかん】。


召喚される魔物は100体以上。


種類としては……


ゴブリン。


ウルフ。


ホーンラビット。


オーク。


岩トカゲ。


……などなど。


アレックスが倒したのは弱い魔物ばかりだったが、召喚された魔物たちは、アレックスの魔力を受けているので、強化されていた。


「さあ、王都を盛大に破壊せよ。魔物たちよ!」


とアレックスは、召喚した魔物たちに命じる。


魔物たちはアレックスの命令にしたがい、行動を開始するのだった。




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