第8章352話:第二形態

<ルチル視点>


大剣を振り下ろしたジルガーン。


一瞬、硬直している。


そこにレオンがジャンプして斬りかかる。


「ラァッ!!」


その攻撃がジルガーンの横腹よこばらをさらに傷つける。


ダメージが入ったのはいいが、レオンが滞空たいくうしたままだ。


あれでは反撃されたときに対処できない。


実際、ジルガーンは、滞空するレオンに反撃をせんと構えていた。


私はそれを妨害するべく、ジルガーンに迫って、太腿部だいたいぶを斬りつけた。


「――――――」


一瞬、私の攻撃に気を取られたジルガーンが、動きを止める。


そのあいだにレオンが地面に着地して、ジルガーンから退避する。


ジルガーンが私を見下ろして、大剣を振り払おうとするが、そこに。


「ハァッ!!」


ラクティアの魔法弾まほうだんが炸裂する。


複数の魔法弾がジルガーンへと飛来し、ヒットする。


「ヌゥウウウッ!!」


魔法弾を食らったジルガーンが、ひるみながら、少しずつ後ずさる。


ラクティアは魔法弾をち続ける。


私は叫んだ。


「レオン!」


「ああ!」


レオンはうなずいて、ジルガーンへと攻撃を仕掛けた。


私も続いて、ジルガーンへと斬撃を放つ。


「グゥウウウウウッッ!!!?」


ラクティアの魔法弾。


レオンの攻撃。


私の斬撃。


三人による同時攻撃どうじこうげきに、ジルガーンは完全に圧倒されている。


反撃ができずに攻撃を受け続ける。


それが数秒ほど続いて。


ジルガーンが急に咆哮ほうこうする。


「ヅォオオオオオオオオオオッ!!!!」


「!?」


「ひっ!?」


「……」


レオンとラクティアはビクッとする。


一方、私は『いよいよ来たか』と思った。


「な、なんだ!?」


とレオン。


第二形態だいにけいたいへの変身ですわ!」


私はそう答える。


ジルガーンがまるで力を解放していくように、赤と闇色のオーラをみなぎらせていく。


私は告げた。


「今がチャンスですわ! 攻撃なさい!」


「はぁ!? 今って!?」


「変身中は硬直してますから! 早く!」


――――ジルガーンの変身は、HPが7割を下回ったら発動する。


つまり、もうジルガーンのHPは7割なくなっている。


残りはたった3割だ。


あっという間に7割ものHPを削ることが出来たのは、まさしくレオン・ラクティアのおかげである。


聖剣士と聖巫女の攻撃はそれほどまでにジルガーンに対して有効であり、最速でラスボスを倒せるものなのだ。


「いきますわよ!」


私は喝破かっぱしつつ、ジルガーンへと飛びかかる。


斬撃を浴びせる。


「―――――――――」


ジルガーンは動かない。


変身中のジルガーンは反応しないのだ。


だがジルガーンにはダメージが入っている。


私の斬撃はジルガーンには効きにくいが、回復さえされなければちゃんとダメージは蓄積する。


「うぉおおおおお!!」


レオンも私に続いてジルガーンへと斬りかかる。


「ハァアアッ!!」


ラクティアも魔法弾を放ち始める。


私、レオン、ラクティアの同時攻撃。


ジルガーンは身動きせず、攻撃を受け続ける。


(いけるかしら!?)


第二形態になったら攻撃力、防御力、速度など、すべてにおいてステータスが向上する。


さらに新しい攻撃パターンが数多く増える。


だから、変身が完了する前に倒し切ってしまいたい。


このまま押し切れることを願いながら、私たちは攻撃を叩き込み続ける。




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