第8章333話:王都の騒乱

<ルチル視点>


突如、王都おうと全域ぜんいきに広がったアレックスの演説。


王都の貴族街きぞくがいにあるカフェで、お茶をしていた私は、驚愕していた。


慌ててカフェを出る。




「さあ出て来い! まだ私の覚悟が伝わらないか? ならば――――――こうだ!!」




アレックスの声。


すると遠くで、2つのハリケーンが発生しはじめたのが見えた。


貴族街きぞくがいは少し高い位置に存在するので、城下町じょうかまちの様子がよく見えるのだ。


王都の中に2つの竜巻たつまきが荒れ狂っている。


「竜巻魔法!? まさかアレックスが……!?」


信じられない想いで、私はハリケーンを見つめた。


「ルチル様……これはいったい……」


とエドゥアルトも呆然としている。


フランカも絶句し、リファリネスも困惑の色を浮かべていた。


そのとき。


「うわああああああああああ!!?」


「きゃあああああ!?」


「へ、兵士か!!?」


「いえ、兵士じゃなくて魔物よ! 魔物が貴族街に!」


と悲鳴が聞こえてきた。


すぐさま視線を向けると、どういうわけか闇色の鎧に身を包んだ兵士たちが、人々を襲っているところだった。


兵士たちはかぶとを身につけているが、兜の下にうかがえる顔は、確かに人間のものではない。


魔物である。


「なっ!? いったい何が!?」


とフランカが驚きの声を上げる。


「とにかく魔物を倒しますわよ!」


「は、はい!」


「了解です」


とエドゥアルトたちが返事をした。


私たちは闇色の兵士たちを殲滅せんめつする。


そこそこ戦闘能力の高い魔物兵士まものへいしのようだが、私たちの敵ではなかった。


と、そのとき。


――――1人の婦人がいた。


貴族の女性である。


その貴婦人きふじんは逃げていたのだが、彼女の逃げる先に、突如として魔法陣が出現する。


召喚魔法陣しょうかんまほうじんだ。


その魔法陣の中から、闇色の鎧を来た3メートルの騎士が現れる。


「ひっ!!」


貴婦人きふじんは立ち止まった。


「いけない!!」


私はすぐさま駆け出した。


アイテムバッグから剣を取り出す。


横から闇騎士やみきしを攻撃する。


「グォオオオオオオ!!?」


闇騎士が悲鳴を上げて倒れる。


なんとか一撃で仕留めることができたようだ。


「大丈夫ですかしら?」


と私は貴婦人に声をかける。


「は、はい。ありがとうございます……!」


「早く安全な場所にお逃げなさい。王城おうじょうへ向かうのがよろしいと思いますわ」


「はい……!」


と貴婦人がうなずき、駆けていく。


エドゥアルトたちが近づいてきた。


フランカが疑問を口にする。


「今の……召喚魔法陣しょうかんまほうじんでしたよね? 誰かが、あの魔物たちを召喚したということですか!?」


闇色の騎士は召喚魔法陣から現れた。


他の闇兵士たちも、同じく召喚陣から出現したのだろう。


「しかし……術者じゅつしゃの気配はありませんね」


とリファリネスが周囲を見回しながら、つぶやく。


「……」


私は、険しい表情を浮かべた。


なぜなら、この魔物兵士たちには見覚えがあったからだ。


(これは、まさか……ラスボスの軍団兵ぐんだんへいじゃ……?)


と私は推定する。



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