第8章318話:ルビーロッドと

「では、私は失礼する」


クラウス殿下との話が終わる。


殿下が去っていく。


私も立ち去ろうとした。


しかし。


「……!」


視界の端に、こちらを見つめる女がいた。


ルビーロッドである。


彼女は私に近づいてきた。


「久しぶりじゃな」


と声を掛けてくる。


なんだか今日は、いろいろな人とよく会うな……と私は思いつつ、尋ねた。


「……何か用ですの?」


ルビーロッドが答える。


「戦争で活躍したらしいではないか。ゆえに祝辞を述べに来てやったのじゃ」


「それはどうも」


と私は答えた。


ルビーロッドは面白くなさそうに告げる。


「おぬしが英雄と呼ばれるようになってから、学園はおぬしの話で持ちきりじゃった。おぬしに突っかかってきたわらわなんぞは、肩身かたみの狭い思いをしておるわ」


「ふふ、自業自得ですわね? 今後わたくしのことは、神のごとく崇めることですわ」


と得意げな顔をしてやった。


するとルビーロッドは、心底イヤそうな顔をした。


「おぬしを崇めるぐらいなら、首を吊って死んでやろう。……しかし、崇めるつもりはないが、仲良くするつもりはある」


「!?」


私は驚いた。


ルビーロッドが……私と、仲良くしたい?


口が裂けてもそんなことは言わなさそうなのに。


いったいどういう心境の変化か?


ルビーロッドが説明する。


「父上に言われたのじゃ。ミアストーン家とは仲良くしておけとな」


「あ、ああ……」


なるほど。


実家の意向ということか。


「じゃからまあ、大変不服ではあるが……今後、よろしく頼む」


とルビーロッドが本当に不服そうな顔で言ってきた。


私は苦笑してしまう。


するとルビーロッドがにらんできた。


「何を笑っておる?」


「いいえ。別に」


と私は応じる。

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