第7章302話:街めぐり

「深淵に落ちた私は、そのまま意識をうしない、長いあいだ眠りについて、あのボス部屋で目を覚ましたのです」


なるほど。


つまり。


(深淵に身を投げたら……時を経てダンジョンボスになる、ということなのかな)


話をまとめるとそういうことになるだろう。


「ちなみに身を投げた理由については、覚えてはいませんの?」


「はい。覚えてないです」


そうか。


「深淵というのは、いったい何処にあるものなんでしょうか?」


とフランカが疑問を口にした。


エドゥアルトも尋ねる。


「私も、深淵の正確な位置は判明していないと聞いたことがありますが……今の話だと、行ける場所にあるということですよね?」


リファリネスは答える。


「すみません。何処どこにあるのかについても、やはり覚えておりません」


ふむ。


まあ、ダンジョンボスが生まれるメカニズムについて、おぼろげながら判明しただけでも、すごいことだ。


ダンジョンについてはわかっていないことのほうが多いからね。


リファリネスのもたらした情報は、ダンジョン研究家などに伝えて、深く考察させるべきだろう。





さて、馬車が走り続ける。


引き続き、元大公領もとたいこうりょうの視察をおこなう。


次にたどりついたのは、副都の東にある【シトルンの街】。


人口7000人程度の中規模の街だ。


この街の市長と、役所で会合をおこなう。


市長によると、シトルンの街では戦争によって兵士や戦士、冒険者などが多く失われた。


どの都市や街でも、敗戦による兵士の不足は起こっている問題だが、シトルンの街は特にひどいようで……


街の警備などに大きな不安を抱えているらしい。


実際、街の周囲で発生する魔物や盗賊の襲撃には、後手後手ごてごての状態になっているようだ。


なので私は、衛兵や冒険者などを増やす政策に税金を投じ、この問題に対処することを、シトルンの市長に約束した。







さらに次の場所……南東に進んで到着したのは【カヌの村】である。


ここでは落石らくせきが発生しており、移動が制限され、村の財政に影響していた。


なので【魔法爆弾】で発破をかけて、落石を破壊した。


あとはエドゥアルトたちに任せて、瓦礫がれきを撤去させた。








さらに次の場所……馬車を走らせて【ゼレタの街】に到着する。


街の市長と、市長邸しちょうていにて会談する。


話す限りでは、ゼレタの街やその周辺では、大きな問題は発生していなかった。


そのため特に指示することはなかったのだが……


私はジャガイモをもっと量産したいと思っていたので、この街の周辺で栽培することを提案した。


もちろんジャガイモの毒の処理方法を伝えたうえで、だ。


市長はゼレタの街だけではなく、周辺の村も治めているので、ゼレタ地方の広範囲で、ジャガイモを栽培することを約束してくれた。






さらに次は【ホクセンの街】。近隣でトマトが栽培されているので、トマトケチャップの生産をさせることにした。


さらに【ウォート村】。広い牧場ぼくじょうがあり、美味しいミルクが採れるので、引き続き、酪農らくのう生産せいさんに励むように伝えた。


さらに【都市アルンバル】。ゼレタ同様に、ジャガイモ栽培をさせることにした。






そのほか複数の都市、村、街をめぐり……


ようやく元大公領もとたいこうりょうの視察は終了することとなった。

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