第3章130話:冒険者ギルド


森から戻ったあと、私たちは冒険者ギルドを訪れた。


冒険者ギルドのロビーには、冒険者たちがまばらにたむろしていた。


試験官は、奥の部屋に入ってギルド長を呼んできた。


ギルド長は筋骨隆々の戦士で、強面こわもてのオジサンである。


彼は私に言ってきた。


「報告を聞いたが……魔大蛇を倒したというのはお前か」


「はい。そうですわ」


「貴族の娘か……ふむ、まあいい。とりあえず証拠を見せてもらおう」


ついてこい、とギルド長が言うので後を追う。


辿り着いたのはギルドの裏庭だ。


ここは魔物の検品などを行っているようだ。


「では、魔大蛇の死体を見せてもらおうか」


「承知いたしました」


私はアイテムボックスから魔大蛇を取り出す。


かなりのサイズがあるので、目立つ。


周囲にいた冒険者やギルド職員たちも、足を止めてこちらを見た。


「ちょっと……アレ、魔大蛇じゃない?」


「すげー。実物は初めて見たぞ」


「デカイな」


その場にいた全員が驚いている。


ギルド長もうなっている。


「よくこんな化け物を倒したな。聞けばソロ討伐だと言うじゃないか。前代未聞だぞ?」


「恐縮ですわ」


「ちなみに素材は売ってくれるのか?」


「肉や鱗であれば、一部提供できますわ。それ以外の部位は、取っておきたいと思っています」


特に魔大蛇の牙、毒腺どくせんなどは取っておきたい。


これらは毒耐性のスキル石の錬金素材となるからだ。


「そうか。では肉と鱗を買わせてもらおう。解体はどうする? ギルドで行おうか?」


「そうですわね。お願いいたしますわ」


話がまとまる。


ロビーに戻って解体手数料を支払った。


すると、ギルド長がずしりと中身が入った金銭袋を渡してきた。


「お前は冒険者じゃないようだから、正式な形で、魔大蛇の討伐報酬をくれてやることはできない。だからこれはギルド長としての謝礼だ。受け取っておけ」


「……ありがとうございます」


「いや、礼を言うのはこちらだ。脅威を取り除いてくれたことに感謝する」


ギルド長が小さく一礼してくる。


感謝をされて悪い気はしなかった。


私は微笑んでから言った。


「それではわたくしはこれで失礼いたしますわ。実は、用事の途中でしたので」


「大学の試験中なんだとな? おい試験官……わかっているだろうな?」


ギルド長に水を向けられた試験官が、うなずく。


「もちろんです。彼女には満点をつけておきます」


「当然だ。魔大蛇の討伐者に下手な点数をつけたら、ギルドの信用に関わる」


やったー! 満点宣言だ!


ギルド長のお墨付きだから、これは確実だね。


私は試験官とともに、ウキウキの気分で大学へと帰還した。

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