第3章124話:パンケーキ4


王城を出て、屋敷に帰りつく。


アリアに報告すると、彼女は感激した。


ルチル商会でパンケーキを一般販売するのは禁止された。


しかし、パンケーキは特別な行事の際には用いられる。


つまり、そういったときにルチル商会がパンケーキの製作を命じられ、重用されるわけだ。


ルチル商会の名声は国内どころか、国外にまで知られていくだろう。


そのことに、アリアは大変な名誉を感じたようだ。




パンケーキが王国最高の菓子に認定されたことは、貴族や有力者たちに通達された。


その際、女王陛下が「これを越える菓子は、今後100年は出てこない」と謳った菓子として公表された。


女王が本当にそんなことを言ったのか、ということについてだが……


どうやら本当らしい。


女王陛下は、よほどパンケーキを気に入ったようだ。






そして、その菓子はダイラス魔法大学で食されていた。


そう。


私のティールームである。


女王にパンケーキを献上してから一週間が経った日。


午後。


マキ、フランカの二人に、パンケーキを食べてもらうことにした。


テーブルにパンケーキとお茶を出す。


マキが感動したように言った。


「これが……パンケーキ。なんと美しい菓子なんでしょう」


一方、フランカが恐縮したような顔をしている。


「で、でも、本当によろしいんですか。私なんかが、このような上等な菓子をいただいて……」


「友達特権ですからいいんですのよ。さあ、召し上がってください」


私はそう告げた。


マキは感激したように顔を赤らめて、フォークを手に取った。


「ああっ、私、ルチル様の取り巻きでよかったです! 頂きます!」


マキは食べ始める。


そして狂喜乱舞した。


というか泣いていた。


「美味しいです……こんな美味しい菓子は、初めてです」


マキが言った。


フランカも同意する。


「これは……他の菓子が食べられなくなりそうですね。今までの菓子と全然違います」


マキは微笑んで言った。


「『これを越える菓子は、今後100年は出てこない』という女王陛下のお言葉は、誇張ではありませんでしたね。フランカさんの仰るとおり、これを食べてしまったら、他の菓子がかすんでしまいそうです」


フランカもマキもパンケーキを褒めちぎっていた。


それがお世辞でないことはわかる。


私はとても嬉しい気持ちになった。

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