第3章122話:パンケーキ2


食堂の座席に着いてもらう。


着席した執事長がホッホッホッと朗らかに笑いながら言った。


「ルチル様の作られたお菓子とは……本当に楽しみですなあ」


メイド長もうなずく。


「最初に食べさせていただけるなんて光栄です」


エドゥアルトが尋ねてきた。


「ちなみに……どういった菓子なのでしょうか?」


「パンケーキという名前の菓子です。甘くて、お上品な菓子ですわ。とりあえず実物を食べてみてくださいまし」


私はパンケーキを四人ぶん取り出した。


全員の前にフォークと一緒に並べていく。


メイド長が歓喜した。


「まあっ……可愛らしいお菓子ですね!」


見た目だけで気に入ったのか、目を輝かせている。


アリアもメイド長に同調している。


「これは……造形だけでもかなり美しいですね」


執事長も感心の声を上げたのち、フォークを手にして、食べ始める。


「では、精霊とお嬢様に感謝し――――頂きます。もぐもぐ……むっ!!?」


執事長が目を見開いた。


そしてぷるぷるとフォークを震わせる。


ややあってから言った。


「これは……美味い!!」


そのあと、メイド長も食べて、驚く。


「美味しい……なんて柔らかい生地と甘味なんでしょう。これは本当に素晴らしい菓子ですね」


良かった、お気に召してもらえたようだ。


と、そのとき。


いきなりアリアが立ち上がった。


彼女は顔を赤らめ、見たこともないような顔をして震えていた。


「これは……こんなお菓子が……」


あら?


アリアの口には合わなかったかな?


そう思っていると、アリアは告げた。


「ルチル様!」


「なんですの?」


「この菓子……パンケーキを、女王陛下に献上いたしましょう!」


「んん!?」


予想外の発言に驚く。


「これは……菓子というジャンルの一つの到達点です。見た目の美しさ、砂糖の甘味と果実の酸味……何より、信じられないほど味が良い。断言します。今まで王国で生み出されたどんな菓子よりも、パンケーキは美味しいです!」


おお……。


アリアが興奮して力説している。


普段、淡々としているアリアがここまで言うか。


よほど気に入ったんだね。


うーん、でも女王に献上か。


シャンプーやトリートメントは使っていただいているみたいだけど、直接献上したことはない。


「エドゥアルトはどう思いますの?」


私は従者に意見をあおいでみた。


エドゥアルトは答えた。


「私も賛成ですね。女王陛下に差し出す菓子として、恥じない品質だと思います。これは貴族社会でも流行るんじゃないでしょうか」


エドゥアルトも満足げにパンケーキを食べていた。


なるほど……


じゃあ、献上するか。


「わかりました。では献上することにいたしますわ。アリア、王城にアポイントの書状を出しておいていただけますかしら?」


「承知いたしました、ただちに……いや、これを食べ終わってからで」


アリアがパンケーキをゆっくりと味わって食べていた。


本当に幸せそうな顔だった。


そんなに気に入ってもらえたら、作った甲斐があったね。

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