第3章91話:試験終了
そうして数学は終わった。
さらに4科目目は歴史、
5科目目は魔法学、
6科目目は政治経済……と済ませ。
私は全ての学術試験を終えるのだった。
手ごたえはあった。
あのダメ王子よりは高得点だろう。
この日のテストはこれで終わり。
翌日。
実技試験も問題なく終えた。
受験は終了だ。
さらに翌日から私は、屋敷でごろごろしていた。
屋敷に来てそろそろ10日。
この屋敷での生活にも慣れつつあった。
そんなある日のこと。
アリアが屋敷を訪れる。
2階の執務室に通して、彼女は報告してきた。
「ルチル商会の規模が大きくなってきたことに伴い、幹部の数も増えました。そこで一度、最高幹部たちだけで会議を開こうと考えています」
「ふーん。つまり顔合わせの挨拶ということですわね」
「はい。それで、その会議にルチル様もご出席いただければ……と」
「わたくしがですか?」
「ええ。やはり一度、互いの顔を知っておくのがよろしいと思いますし……あと」
アリアは一瞬、間をおいてから言った。
「最高幹部の中には、ルチル様の大ファンだという方が多く、ぜひ一度お会いしたいと仰っておりまして」
「ほ、ほう……そうなんですのね」
「ええ。ただ、悪意や反意がないのは結構なのですが、ルチル様への熱狂的な思いが行き過ぎて、粗相をしてしまわないか心配です」
「うーん、まあ、悪意がないならわたくしは気にしませんわよ。多少の粗相をされても」
「さようですか。しかし、その優しさに甘えないように、きっちり言い聞かせておきます」
「ええ。まあ程ほどに……ちなみに、いつごろ会議を開く予定ですの?」
「ルチル様がご入学してすぐというのは、お忙しいでしょうから、大学の夏季休暇にあわせて開くのが良いかと考えています」
「ああ、それは有難いですね。じゃあそれでお願いできますか?」
「承知しました。ではそのように各員に伝えておきます」
話がひと段落する。
と、そのとき私はふと思い出したことがあった。
「ところで、新しい商材を考えたのですが」
するとアリアは、ずいっと身を乗り出した。
「拝聴いたしましょう」
「ええと、入浴剤なのですが……」
私は製作した入浴剤の袋を三つ取り出した。
「こちらから順番に、薔薇、ゆず、バニラの香りですわ」
「薔薇とゆずはわかりますが、バニラとは何ですか?」
「甘ったるい菓子のような匂いがする植物ですわ」
「なるほど……」
「で、いかがでしょう?」
「そうですね。使ってみないと正確な価値はわかりません。一つずつ譲っていただいてもよろしいですか?」
「どうぞ、使い心地を試してみてくださいまし」
「ありがとうございます」
アリアは入浴剤を受け取った。
3日後。
実際に使い心地を試したアリアが、入浴剤を絶賛した。
そのうえで「私も定期購入したい」などと言ってきた。
別にアリアだって買うのは自由なので、好きにしたらいいと答えておいた。
で、以上の入浴剤は、一つ300万ディリンで販売されることになった。
このボッタクリ価格で本当に売れるんだから恐ろしいよね、この商売。
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