第2章61話:乾燥地帯


エドゥアルトが私の騎士になったことをフランカに伝えた。


フランカは、


「おめでとうございます」


と、祝福してくれた。




ちなみに、専属騎士として正式に認定されるのは、国に書類を提出してからだ。


そこからは、私とエドゥアルトのあいだに明確な主従関係が生まれる。


エドゥアルトは私の命令には刃向かえなくなる。


死ねといわれたら死ななければいけない。


ただし、私はエドゥアルトに給料を払う義務が発生する。


専属騎士とは従業員であって、言ってしまえば、武力担当の使用人みたいなもの。


だから働きに応じた報酬を払って、メシを食わせていかなければいけないのだ。


とはいえ、今すぐに何が変わるわけでもない。


しばらくは、今まで通り旅をするだけだ。





それから街道を歩き続ける。


このまま進めば領境の関所が見えてくるが……


新しいスキル石を確保するために寄り道をすることにした。


街道を離れて南にいく。


するとやがてサバンナのような乾燥地帯が現れる。


ここで【耐熱スキル】のスキル石を回収する。


ちぢれ木の下の土を掘ったら、スキル石が発掘できるという仕様だ。


私は確かにスキル石を確保したあと、すぐに使用して【耐熱スキル】を手に入れた。


「というか、どうしてここ、乾燥地帯になっているんでしょうね?」


そんな当然の疑問を口にする私。


別に熱帯地域というわけでもないのに、ここだけ荒野になっている謎仕様。


ゲームだから考えても仕方ないかもしれないけど、何らかの理由付けがあるはずだ。


フランカが説明した。


「確か火の魔石がたくさん埋まっているため、乾燥しやすく、気候も他と少し違うらしいですよ」


なるほど、そういう補完がなされているのか。


火の魔石、ねぇ……。


「ん……?」


そのとき私は、眼前の植物に目を留めた。


熱帯地域に生えている植物。


見覚えがあるような、無いような……


とりあえず鑑定してみる。


ああ、やっぱりそうだ!


(コーヒーノキだ、これ!)


コーヒーの原材料。


それがコーヒーノキと呼ばれる植物である。


この荒野にはコーヒーノキがあちこちに生えている。


今まで気づかず素通りしてたけど、こんなにあるならコーヒーが作り放題だ。


「とても重要な植物を発見したので、採取しておきたいと思いますの。しばしお待ちくださいまし」


私は二人にそう告げて、コーヒーノキを集めまくった。


最初は怪訝そうにしていた二人も、この植物が美味しい飲み物の材料になると知るや、採取に協力してくれた。

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